球道雑記BACK NUMBER
涌井秀章の横に石川歩がいる……。
後半戦ロッテは2人のエースで逆襲へ。
posted2016/07/12 07:00
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
NIKKAN SPORTS
千葉ロッテのエース・涌井秀章は「凄さ」よりも「強さ」を感じさせる投手だ。
今年3月の開幕戦では北海道日本ハムの大谷翔平と投げ合い7回4安打無失点で勝利、6月に行われたセ・パ交流戦では巨人の菅野智之と投げ合って9回4安打1失点に抑えて完投。国内を代表する2大エースを相手に、いずれも先にマウンドを降りることなく勝利した。ここ一番の強さは国内ナンバーワンと言って良いだろう。
もちろん「強さ」には理由がある。
夏場でも妥協することなく、黙々と走り込んで鍛え上げた肉体。
窮地に追い込まれてもぶれることがない精神力。
試合の状況に応じてメリハリを付けられる勝負勘と投球技術。
そのどれをとっても国内最高峰のレベルである。チームの指揮を執る伊東勤監督が、開幕からしつこいくらい、王者・福岡ソフトバンクに彼をぶつける気持ちも分からなくない。
そんな“国内最強”と呼ぶにふさわしいエースと、双璧となる存在が今年はチーム内から出てきた。
入団3年目を迎える石川歩である。
リーグのトップレベルなのに、常に謙遜の姿勢を。
7月10日現在、石川は13試合に登板して9勝3敗、防御率1.89の成績を挙げて、数字の上では現在、涌井の上を行っている。
パ・リーグ勝利数部門でも現在、有原航平(北海道日本ハム)、則本昂大(東北楽天)、和田毅(福岡ソフトバンク)と共にトップを並走し、防御率部門でも堂々の2位。今夏のオールスターゲームにも監督推薦で初選出されて、名実ともにリーグを代表する投手の仲間入りを果たした。
そんな彼に、現在の成績や評価について投げかけると、彼は決まって「いやぁ……どうなんですかね……自分ではそこまで(のレベル)と思わないんですけどねえ」と少し困惑したように苦笑する。
初出場が決まったオールスターゲームについても、「自分なんかが出てしまっていいんですかね」と謙遜するが、数字や他者の評価に踊らされることなく自身を見失わずに歩んできたこの性格こそが、2014年のプロ入り以来2年連続で二桁勝利を達成し、着々とステップアップしてきた一番の要因と言えるかもしれない。