フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
羽生結弦にとっては悔しい銀メダル。
フェルナンデス連覇とボーヤンの躍進。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAsami Enomoto
posted2016/04/04 17:00
ただの緊張ではない。「緊張の“質の違い”に適応できなくて」という難しいコメントを出していた羽生。
完璧なフリーでタイトルを守ったフェルナンデス。
ミスがあったとはいえ、SPでの大きな貯金もあった羽生が、このまま優勝する可能性もあった。
だが圧巻のパーフェクトな演技を見せてSP2位から逆転優勝を果たしたのは、ハビエル・フェルナンデスだった。
右足の靴ずれをこじらせて、前日の公式練習もできなかったというフェルナンデス。だが本番ではシナトラの『ガイズ・アンド・ドールズ』に合わせて、冒頭の4トウループをきれいに着氷。軸が驚くほど細くて高さのある、素晴らしいジャンプだった。続いて4サルコウ+3トウループのコンビ、3アクセル+2トウループときれいに降りていく。まるで上から何かに引っ張られるように、ジャンプが伸びやかにきまっていった。
振付と解釈では10点満点を獲得!
シナトラの音楽に合わせて、フェルナンデスがステップを踏んでいくと会場の歓声がどんどん高まっていった。
ジャンプだけではなく、スケーティングも以前より格段に伸びやかになり表現にも幅が出てきた。彼の持ち味の明るいオーラが、会場を満たしていく。
これは彼が持っていく……。
後半の4サルコウをきれいにきめた瞬間、そう確信を持った。
最後のスピンではほとんど音楽も聞こえないほどの歓声だった。フリー216.41、総合314.93。5コンポーネンツのうち、振付と解釈の2部門では10点満点を獲得した。羽生の歴代最高スコアにこそ及ばないものの、自己ベストを10ポイント以上も更新。
「怪我もあり、楽な戦いではなかった。ユヅルに勝つチャンスがあるとすれば、生涯最高の演技をノーミスでするしかない、と思いました。怪我で不安もあったけれど、この試合さえ乗り切れば休みが取れる、と思って力を絞り出しました」と会見で語ったフェルナンデス。みごとに世界タイトルを守りきった。