スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
バルサBが選んだ「育成より残留」。
25歳の選手を獲得して若手を放出!?
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2016/01/21 10:30
トップチームは現在リーガで2位。世代交代が喫緊の課題ではないという余裕もサブチームの扱いに影響したか。
将来性よりも、目先の降格におびえるバルサB。
それはクラブが「トップチームに戦力を配給する」という本来Bチームが果たすべき役割に見合った選手ではなく、2年連続の降格という最悪の事態を避けるための即戦力を補強していることをよく表している。
先述したエスキエタとロメラもそうだが、3部セビージャ・アトレティコの左SBモイセス・デルガド(21)、3部コルネジャのMFチェミ(20)、昨夏2部ジムナスティック・タラゴナに移籍するまで3部でプレーしていたMFファリ(22)ら他の新顔はみな、現在バルサBが所属している3部でのプレー経験が豊富な選手ばかり。将来性を期待して獲得したのはフルミネンセから買い取りオプション付きのレンタルでやってきた元U-17ブラジル代表FWロベルト・ゴンサウベス(19)くらいだ。
グアルディオラのバルサBでの成功は再現できるか。
こうした現状は、バルサBが34年ぶりとなるテルセラ(4部相当)降格と共に、ルール上それより下のカテゴリーに所属できないバルセロナCが消滅を余儀なくされた2007年夏とよく似ている。
当時クラブが直面したBチームの危機は、バルサBの監督に就任したグアルディオラを中心に乗り越えることができた。グアルディオラは当時、フィジカル面で大人と戦う準備ができていない若いチームの弱点を補うべく、同カテゴリーでのプレー経験が豊富な21~26歳の即戦力を各ポジションに補強。これがその後国内外で活躍することになるジョナタン・ソリアーノ、ノリートら“ベテラン”に引っ張られる形でカンテラーノたちが急成長するという相乗効果と共に、数年のうちにセグンダAで上位を争うまでの成功をもたらした。
今冬の補強方針も当時の成功に基づいて行っているのだろうが、その傍らで長年手塩にかけて育ててきたカンテラーノの流出が相次いでいるのは残念なことだ。
2011年に15歳と349日でセグンダAの最年少出場記録を作った早熟の左サイドバック、アレハンドロ・グリマルド(20)は今季からキャプテンとしてチームを引っ張ってきたものの、ルイス・エンリケの指揮下ではトップチーム入りの見込みがないと見切りをつけ、昨年末にベンフィカへと移籍した。