Number ExBACK NUMBER
藤浪晋太郎「ミスター・タイガース
よりも、阪神のエースと呼ばれたい」
posted2015/09/03 16:10
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Nanae Suzuki
インタビューは、8月20日に東京ドームで巨人の菅野智之と投げ合い、惜しくも1対2で敗れた翌日に行なわれた。
プロの世界に入って年を経るごとに「1球の怖さ」を痛感しているという藤浪に、前日の試合を振り返って、「あの1球が大きかった」と思うのは? と尋ねてみると、次のような答えが返ってきた。
「やっぱり、最終回に先頭の小林誠司さんにデッドボールを当てたところ。ちょっと、もったいなかったですね。ここをしっかり抑えないといけないって力んでしまって、スッポ抜けてしまいました」
四死球は、荒ぶるピッチングを武器とする藤浪にとって、諸刃の剣だ。とはいえ続く代打・橋本到のバント処理で自ら失策して傷を広げた。1番・立岡宗一郎にライト前へ運ばれ、無死満塁となったところで無念の降板となった。
飛躍のきっかけとなる1球があった。
マウンドを降りる際、スタンドのファンから拍手とウェーブが贈られたように、この日の藤浪は気迫あふれる投球で8回まで12奪三振と、本領を十分に発揮していた。それだけに、文字通り「1球の怖さ」を思い知らされる結果になったのだ。
だが、怖ろしさを知る1球があれば、飛躍のきっかけとなる1球もある。
藤浪は今シーズンの「ベスト・ピッチ」として、5月14日のヤクルト戦(神宮)での1球を挙げた。
「何回だったかは忘れましたけど、ピッチャーの成瀬(善久)さんの打席ですね。キャンプからいろいろ試してきたことをやってみて、うまくハマッたというか。ピッチャーによってバッティングの良し悪しはありますけど、たまたま試すことができる場面だったので、やってみようと。これがきっかけになって、この打席でつかんだいい感覚を、意外といいなと思って、今でも続けています」