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ミランの新監督は実力主義の強面男。
ミハイロビッチと本田圭佑の相性は?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/07/01 10:50
ミランの新監督は昨季、中堅クラブのサンプドリアを7位に躍進させたミハイロビッチ。名門でのハードルはさらに高く、CL復帰は最低目標だ。
血眼でボールを追うことが、彼の下で試合に出る方法。
ミハイロビッチの選手たちは、つねに闘争心全開で誰もが血眼になってボールを追った。彼らにとって、そうすることが試合に出してもらうための唯一の方法だったからだ。
一流半の選手たちを鍛え上げ、上位に引き上げたミハイロビッチは、決して戦術的に器用な指導者ではない。だがボスニア内戦の戦火を潜り抜けてきた彼は、巷にあふれる名ばかりの闘将とは、肝の座り方がちがう。
ミハイロビッチの登用は、ここ数年顕著になっているミラン上層部の場当たり的判断の産物と言えなくもない。だが、17年ぶりの二桁順位に沈んだミランに欠けていたのは、とにかく“戦う集団”としての意識であり、ミハイロビッチこそそれを復活させるためにうってつけの人材であることは間違いないところだ。
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混迷の昨季中に「選手ひとりひとりの向いている方向がバラバラ」と嘆いたこともあった本田にとっても、完全実力主義のミハイロビッチ就任は、むしろ望むところではないか。
新チームの選手たちが抱える名声も高年俸も、反骨の男ミハイロビッチには関係ない。ミランのあらゆるポジションは今、まっさらの白紙状態なのだ。
大型補強とコンバートで、熾烈なポジション争いが。
とはいえ、6月上旬の仮合意調印によって、多額の出資と引き換えに、タイ人投資家ビー・テチャンボウ氏へクラブ経営参加の道を開いたことで、ミランは今夏の移籍市場で久しぶりに活発な動きを見せている。
FWイブラヒモビッチ(パリSG)やFWジャクソン・マルティネス(ポルト→A・マドリー)にはフラれたが、EL王者セビージャのコロンビア代表FWバッカ獲得に3000万ユーロを注ぎ込んだ。
中盤にも、縦への突破力を持つイタリア代表MFベルトラッチをローマから獲得し、コパ・アメリカ後、これからが補強攻勢の本番といえる。
FW陣の中からは、昨季も怪我で不遇をかこったエルシャーラウィのように「ミハイロビッチと話し合って、是非トップ下をやりたい」と、コンバートを提案しつつ、監督交代を飛躍の契機とするべく新シーズンのレギュラーポジション奪取をアピールする者も出始めた。休暇明けの本田をミラネッロで待ち受けるのは、熾烈なポジション争いだ。