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巨人・高木勇人に黒星が続く理由は?
「打たれる怖さ」が奪った思い切り。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/06/26 11:00
防御率は2点台をキープしているものの、白星から見放されている高木勇人。6勝は菅野智之と並んで巨人の勝ち頭であり、シーズン後半へ向けて復活が期待される。
巨人・高木勇人が直面した「壁」。
なぜこんな話を書いたのか。
開幕から1カ月近く経った4月半ばくらいに、原監督に高木勇人投手の話を聞いたときに、こんなことを言っていたのを思い出したからだった。
「彼はまだ1年目。負けることの怖さを知らないからね。いずれそういう局面が来る。そのときに、その恐怖心をどう乗り越えられるか。そこで高木勇人という投手の本当の力が試され、将来が決まることになる」
ちょうどその頃は、投げれば勝つという連勝の最中だった。三重の海星高校から社会人・三菱重工名古屋で長い雌伏のときを過ごして、ようやく飛び込んだプロの世界。無我夢中でマウンドに立ち3月29日の初先発からいきなり5連勝をマークした。しかし5月10日のDeNA戦で初黒星を喫すると、その後は7度の登板で1勝5敗と勝てなくなっているのだ。
「確かに打たれることの怖さを知ったというのはあるね」
こう語るのは斎藤雅樹投手コーチだ。
実は黒星を喫してからのピッチングも、決して内容的には悪くないと同コーチは評価する。
確かにその間の7度の登板でも6回を自責点3点以内というクオリティースタートが4回。そのうち5月17日のヤクルト戦では8回を自責点1(失点2)、6月14日のロッテ戦では8回3分の1を自責点1(失点3)というハイクオリティースタート(7回以上を自責点2以内)で抑えながら、敗戦投手となっている不運もある。
勝負どころで四球から崩れる、という敗因。
ただ、この敗戦の中で共通の敗因は、勝負どころで四球から崩れているということだ。5月17日のヤクルト戦では、7回の2点目は先頭の雄平外野手への四球がきっかけだった。6月7日のソフトバンク戦でも、先制を許した4回は松田に四球を与えて高田にツーランを打たれてしまっている。
5敗目となった6月23日のDeNA戦でも、5回まで無失点の好投を見せながら6回2死から筒香嘉智外野手に与えた四球から一気の逆転を許してしまっているのである。
「ここまではがむしゃらにやってきたけど、打たれる怖さを知って、コーナーを狙いにいって慎重になりすぎてしまうことがある。結果はどうなったか分からないけど、(筒香とは)勝負して欲しかった。ここを乗り越えないとね。ここで終わったら普通の人になっちゃうよ」
斎藤コーチもDeNA戦後に、こう高木の変化を認めている。