欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
岡崎慎司がまくしたてた濃密な15分。
端々に滲む、日本サッカーへの愛。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2015/03/19 10:45
不調と騒がれながらも、気づけば今季も既に10得点を決めている岡崎慎司。ブンデスリーガの得点ランキング上位に彼の名前があることは、もはや見慣れた光景となった。
Jリーグの走行距離と、ドイツでの走行距離は違う。
そこで、ドイツ人のファンからサインを求められて話は中断したが、その後も岡崎は、日本サッカーについての話を続けた。
「なんで俺が(ドイツで)やれているのかなって思ったら、点じゃないんですよ、守備なんですよね。日本に足りない部分は守備じゃないかな。身体の強さとか、走りの能力とか、そこから逃げていたらダメだと思う。今、Jリーグでも走行距離を測っているじゃないですか? みんなすごく走っている。だけど、その走行距離だけでは、わからないものがある。
実際にドイツでプレーしていると、激しくて強い、相手の当たりがある。そのコンタクトを受けて走れるか? そこに守備の課題が出てくる。こっちでは守備でガンガン行けるかっていうことを最初に求められるから。その守備の土台と走りの能力、そこに日本人の技術力があれば、絶対にこっちでも通用すると思う。
大記(山田・カールスルーエ)は巧さだけじゃなくて、強さも持っている。あいつは絶対に上へあがってくる。あいつと昇格(残留)プレーオフを戦うような状況は、絶対にイヤですね」
岡崎は、わずか15分で思いのたけを一気に話した。
3月15日現在11位。プレーオフを戦う16位との勝ち点差は6ポイント。しかし、3月22日には2位のヴォルフスブルクとの一戦が控えている。その後も9位のブレーメン、4位のレバークーゼンと強敵とのカードが続く。
「メングラ(ボルシアMG)戦からずっとオフェンスの強い相手が続く。だから、俺らは守備的に戦う。引いて我慢強く守り続ける。まずはステイです」
そう話す岡崎は、少し得意気だ。その戦法で上位と渡りあった。それが今のマインツの強みだという自信があるからだろう。守備に時間を割くことは、アタッカーにとって歓迎できる状況ではないはず。しかし、その現状を受け入れ、自分がやるべきことに力を尽くす。守備をして、そして、ゴールも狙う。岡崎の目指すべきイメージは明確だ。
評価や結果から解放されることがないのがプロの世界。チームスポーツであるサッカーでは、求められる仕事にもチーム状況や対戦相手などによって変化がある。だから、苦悩し、試行錯誤を繰り返す。柔軟な姿勢は、成長し、成果を残すために欠かせない能力だが、決して、優柔不断であってはならないということなのだろう。
わずか15分足らずの取材だったが、力強い岡崎の言葉を聞きながら、いっそう心身ともに軸が太くなったストライカーを頼もしく感じた。