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南野拓実、2ゴール1アシストの内実。
彼は3点差でもなぜ走り続けたのか?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2015/03/05 17:15
2ゴール1アシストで早くも高い順応性を見せた南野拓実。昨季はセレッソで苦しいシーズンを過ごした男が、オーストリアの地で変化を見せつつある。
オーストリアの観客動員数はJ1よりもはるかに少ない。
南野が用いた「次のステップ」というのは、オーストリアリーグでプレーする若手選手ならば誰もがイメージしているものだ。
この国では、ザルツブルクのような人気チームのホームゲームを除けば、1試合の観客動員数がわずか2000人程度のこともある。J1よりもはるかに少ない。そのような境遇に身を置くのは、ヨーロッパの一員であるオーストリアでプレーすることが、ヨーロッパの頂点につながっていると信じるからに他ならない。このチームでアシストの山を築き、この冬にドルトムントへ移籍したケビン・カンプルなどは、その典型である。
今は厳しい環境でも、いつかは……。そのような意識がチームにあるかと問われた南野はこう答えた。
「このチームには若い選手が多いですけど、みんなそういう意識でやっているというのを常に感じながら僕もやっています。そのために、まずはこのチームで結果を出すことが一番だと思っています」
先制点が生まれたのは、前半12分のことだった。そして、1-0でリードした状況で、ザビツァーが退場を命じられた。
1人少ない状況で戦うことになったザルツブルクは、カウンターやセットプレーからチャンスをうかがう。カウンターでボランチの選手がドリブルで前に運んでいくと、南野はそのスペースを埋めるように中央よりにポジションを移すなど、バランスをしっかりと考えてプレーしていた。
クロスが入りそうな場面では、必ずゴール前へ。
ただ、チャンスになりそうな場面では別だ。
味方からのクロスが入りそうな場面では、必ずといっていいほどゴール前に入っていく。この試合の前までにELを含めて公式戦3試合でプレーしているが、その中でシュートを打てたのはわずか1度だけ。しかし、この試合では積極性が違っていた。
すると、38分に右サイドの高い位置からのFKからのこぼれ球がゴール前にいた南野のもとへこぼれる。左足で放ったシュートが一度はディフェンダーにブロックされたが、はじかれたボールを今度は右足で蹴り込み、待望の初ゴールを決める。1人少ないチームにとっても、待望の追加点だった。
後半25分にはヴァレンティーノ・ラザロがペナルティエリア内左サイドでシュートを放つと、GKがはじいたボールがファーサイドにいた南野のもとへこぼれる。迷うことなく右足を振り抜き、ゴールが生まれた。南野の2点目で3-0に。試合の行方が決まった。
さらに、後半ロスタイムにも左足のクロスでMFバロン・ベリシャのゴールをアシスト。終わってみれば、3ゴールに絡む大活躍で、4-1の勝利に貢献した。