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<全豪オープンプレビュー> 灼熱の戦いを制する者は?~錦織圭、四大大会制覇なるか~
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byHiromasa Mano
posted2015/01/08 11:50
フェデラー、ナダルの壁を突き破ることはできるか?
2位のフェデラーも錦織には怖い存在だ。11月のツアー・ファイナルズでは番狂わせを目論んだが歯が立たず、「展開が早くてリズムが作れなかった」と悔しがった。改めて強さを思い知らされたのか、後日、会見で「一番の壁」としてその名前を挙げた。
フェデラー同様、錦織の前に立ちふさがるのが過去7戦全敗のナダルだ。昨年は両膝や右手首の故障に苦しみ、11月には虫垂炎の手術でツアーを離れた。それでも全豪に照準を合わせ、12月には本格的なトレーニングを開始。この頃には、「今の目標は体とテニスを戦える状態に持っていくこと」と話している。
錦織は'14年、全豪とマドリードでナダルを相手にレベルの高い試合を2つ演じ、それがシーズン後半の飛躍につながった。どこまでできるか、初勝利なるか、ファンにとっては最も実現してほしい対戦だろう。
“ヤングガンズ”の中で錦織が最も警戒するデルポトロ。
錦織とともに男子テニスの明日を担うと期待される“ヤングガンズ”、ラオニッチ、チリッチとグリゴル・ディミトロフも、錦織がマークしなければならない存在だが、もう一人、忘れてはならないのがデルポトロだ。左手首の故障が長引き、昨シーズンを棒に振ったが、全豪には公傷制度でエントリーした。錦織が同世代で最も手強いと警戒する選手である。'12年のロンドン五輪以来の対戦が実現すれば、今の実力を計る恰好の指標となるだろう。
昨年の大会中盤には最高気温が連日、40度を超えるなど、全豪は酷暑の大会として知られる。'09年にジョコビッチが熱射病のため準々決勝を途中棄権するなど、選手は暑さに苦しんできた。しかし、そのジョコビッチはグルテンフリーダイエットで体質改善を図り、弱点を克服。他の選手も医科学的なアプローチでフィジカルを向上させ、普段と変わらぬパフォーマンスを可能にしている。体調不良が勝敗を分けることはあっても、暑さへの適性が優勝を占う決定的要因とはなりえない。また、やや球足の遅いハードコートはツアーでは標準的で、得意不得意の差は出にくい。つまり、選手の実力が正直に結果に反映されるはずだ。
したがって、2週間の戦いからは'15年の勢力図もある程度、見えてくるだろう。錦織は上位3人にどこまで迫れるか、それとも一気に突き抜けるのか。もしかしたら我々は、男子テニスの歴史が変わる瞬間を目撃することになるのかもしれない。