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アメリカGPで起きたボイコット騒動。
いまF1に求められる“自戒”とは。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2014/11/09 10:40
アメリカGPではハミルトンが5連勝で今季10勝目を挙げた。ロズベルグが2位に入り、メルセデスのワンツーフィニッシュは今季10回目を記録。
経営難に苦しむ3チームがボイコットを示唆。
モンツァでのミーティングから28年。弱肉強食の縮図ともいえるF1の世界では、コース上だけでなく、コースの外でも生き残りを賭けた戦いが常に繰り広げられている。
今年もケータハムとマルシアの2チームがシーズン途中で財政破綻。アメリカGPとブラジルGPの欠場を余儀なくされ、最終戦に復活の望みを託しているが、その道は険しいままだ。
今季のケータハムとマルシアだけではない。'12年にはシーズン終了後にHRTがF1から撤退。'09年にはトヨタ、'08年にはスーパーアグリ、'02年にはアロウズ、'01年にはプロストと、2000年以降だけでも、5チームがすでにF1から姿を消している。'80年代から'90年代にかけては、この比ではないほど多くのチームができては消えていった。
そんな中、ケータハムとマルシアに次いでチーム運営が厳しいと言われ、撤退の噂も流れたロータス、フォース・インディア、ザウバーの3チームが、アメリカGPで“実力行使”に出た。
「いまのコンコルド協定は利益配分がトップチームに偏っており、われわれ小規模のチームの経営は厳しい。分配金の配分を変えなければ、レースをボイコットするかもしれない」
トップチームは分配金の変更に消極的。
エクレストンとトップチームの関係者らで話し合いが持たれ、レースをボイコットする最悪の事態は回避されたが、トップチームの多くは分配金の配分を変更することに消極的だった。フェラーリのある関係者は言う。
「フェラーリがほかのチームよりも多くの分配金をもらっていることを批判する人もいるが、フェラーリがこれまでF1界を盛り上げてきたことを考えれば当然のこと。われわれは分配金をもらうだけでなく、F1へも投資してきたんだから」
トップチームの言い分を否定するつもりはない。しかし、たとえそれが正論だとしても、下位チームの撤退は自分たちの首を絞めることに繋がる。もし今シーズン限りでロータス、フォース・インディア、ザウバーの3チームが姿を消し、来季のF1が6チーム12台となれば、フェラーリがいかにF1へ投資しようが、その価値は半減してしまうのではないだろうか。トップチームであるなら、自分たちのことだけでなく、F1界全体を見渡した判断を下す義務がある。