女三代フルマラソンに挑むBACK NUMBER

大阪マラソンへ向けて練習スタート。
「おばあちゃんじゃあらへんよ!」 

text by

中島彩

中島彩Aya Nakajima

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photograph byAsami Enomoto

posted2014/09/25 10:30

大阪マラソンへ向けて練習スタート。「おばあちゃんじゃあらへんよ!」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

本番・大阪マラソンまであと1カ月、お揃いの帽子でポーズ。

ポカリスエットをまさかの初体験。

 さて、初練習の日は7月の最終週。夕方とはいえ、ちょっと動けば汗が出て、喉が渇きます。熱中症にならないようにとドリンクを渡しても、いっこうに飲もうとしない祖母。

 理由はトイレ。トイレに行くのが大変だからと、水分を拒否していたのです。

「おばあちゃん、トイレは中之島公園にあるから、ぜひ行ってよ~!」と言うと、「そんなん、大会の時はどうすんの?」「42.195kmの中に、いくつも仮設トイレが設置されてるから心配しなくていいんよ」と言っても、「でも、プロの人はそれで時間かかるから行かないやん」と心配。私たち、プロじゃないよね……(笑)。

 2時間台でゴールする人にとって2~3分のトイレはアウトかもしれませんが、私たちは7時間かけて走るんですから、トイレもご飯もしっかり行ってゴールを目指すわけです。

 なんてことを説明すると、しぶしぶポカリスエットを口にしました。

 なんと祖母は、これがスポーツドリンク初体験。確かに、祖母の食生活は、味の付いたものは健康に良くないと、まさに無色無味無臭なのです! 

 密かに祖母が甘いドリンクを飲めるか心配していた私は、これで一安心。79年も生きてくると舌も頑固になり、「新しい味」に馴染むのも大変なんです! 例えば、炭酸なんて絶対受け付けません。マラソンの道中にスポーツドリンクを飲めないとなると一大事なので、まずは一つ関門クリアです。

 初めてのランニングシューズ、ランニングウェア、初めての「走ること」、初めてのスポーツドリンクと初めてづくしのランニングでしたが、どうにか3kmも走ることができました。公園のゴール地点で、両手を挙げて「ばんざーい!」と3人でお祝い。この14倍あるということは、その時は言いませんでした(笑)。

ランナーの皆さんから刺激。そして、想い出フラッシュバック!

 2回目の3人での練習は、その1カ月後でした。私が東京で仕事している間も、祖母と母の2人で練習を重ねていたようで、そのチェックも兼ねた練習会です。

 今回の舞台は大阪城公園。そう、大阪マラソンのスタート地点! あと2カ月もすれば、ここから42.195kmの道のりにスタートするんやね、と一気に本番のイメージがわいたようでした。

 大阪城公園は周回コースになっている大阪のランナーの聖地。東京で言えば皇居です。多くのランナーが足早に走る姿を見てテンションがあがったのか、祖母も負けじと猛ダッシュ。

 私は「あかんよ! 飛び出さんといて! そんなん続かないから、ペースを抑えて」と祖母の腕を引っ張りました。

 あれ、このシーンってどこかで……。

 その瞬間頭をよぎったのは、まだ小さかった私が急に走りだした時に「彩ちゃん、飛び出したらあかんよ」と止めてくれた祖母や母の姿でした。20年経って、私が祖母に飛び出し禁止を言うとはねぇ……。

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