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日本一のトレラン大会をつくれ!
100マイルレースの舞台裏 <前編>
text by
山田洋Hiroshi Yamada
photograph byToshiya Kondo/Hiroshi Yamada
posted2014/08/21 11:00
河口湖畔のスタート地点、約1400人のランナーが100マイルに挑んでいった。
映像化しにくいウルトラトレイルを、映像化する。
100マイルもの距離、山々を駆け抜ける――。そんなウルトラトレイルの世界をあなたはどこで知っただろう。多くのランナーがとりわけ思い出深いものとしてあげるのが、2009年に放映された「激走モンブラン!」だ。
ウルトラトレイル・デュ・モンブラン(UTMB)のスタート/ゴール地点となるシャモニーの街の熱気、アルプスの壮大さ、そしてUTMF実行委員長である鏑木の3位に入る激走。どれも見たことのない光景だった。
そしてUTMFの動画も、YouTubeやDVDなどで見られ、実際に参加したランナーやサポートした人は勿論、当日会場に来られない多くの人が映像を目にしている。それに憧れてトレイルランを始めた人も多いだろう。
「第2回大会のDVDが3000枚売れたんですけど、UTMFはメジャースポーツじゃないですから、これは普通じゃ考えられないことなんですよ」
そう話す大会アドバイザーの中尾益巳さんは、テレビ局のプロデューサーが本業であり、映像コンテンツの重要性を誰よりも理解している人物。今年も全部で10班にもなる撮影クルーを取り仕切った。
「サッカーとか野球とか、フィールドの大きさが決められたスポーツと違って、富士山ぐるり一周ってやっぱり凄く広大なんですよ。マラソン中継の場合は、先頭を中心に追い掛けて2時間ちょっとで終わるけど、こっちは基本的にすべて山の中で、しかも46時間。スケール感が桁外れなので、どう伝えたらいいのか難しい面が沢山あるんです」
バイクが入れない山中で活躍するランニングカメラマン。
だが、常に新しい映像表現を探しているという中尾さんのアイデアは随所に見られる。
山中にはバイクで入れない箇所も多数存在するが、そこで活躍するのが「ランニングカメラマン」と呼ばれる人たちだ。
「トップ選手にずっとついていくことはできないけど、走れる人にカメラを持たせれば、僅かな時間だったら並走したり、前後にポジションを取れる。そうすれば誰も撮ったことのない映像が撮れるでしょ」
ラジコンヘリでの空撮を試みたり、複数のカメラからストリーミングでのライブ配信も試みるなど、積極的に新しい技術を取り入れている。
「実は10班の撮影クルーとは別に配達係がいます。彼らはクルーが撮影した映像を手渡しで受け取り、映像班の本部がある河口湖まで運ぶんです」
通称“富士山バイク便”と呼ばれる彼らが運んできた映像は、その場ですぐに編集作業がなされ、撮影から数時間後には大会公式アカウントから動画として配信される。編集スタッフが一睡もせずにひたすら作業を続けたことで、大会期間中に配信された動画は10本近くにもなり、スタート時の動画は1万ビューを稼いだ。