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日本一のトレラン大会をつくれ!
100マイルレースの舞台裏 <前編>
text by
山田洋Hiroshi Yamada
photograph byToshiya Kondo/Hiroshi Yamada
posted2014/08/21 11:00
河口湖畔のスタート地点、約1400人のランナーが100マイルに挑んでいった。
ボランティアのリクエストには、限りなく応える。
今年の最大の苦労は、大会1カ月前に急遽コースが逆回りになったことだ。コースが河口湖を起点に時計周りへと変わったことで、組み立てていたプランが全てひっくり返ってしまった。
「時間、場所、配置、人数、送迎のタイミングとかあらゆることが全部チャラです。何もかも1カ月でゼロから作り直したんですけど、クレームのメールばっかりでしたよ(笑)。1日に100通というのもざらで、僕は他に仕事もしていますから夜11時くらいからメールを見始めて、ひとつひとつ対応して終わったら朝だったみたいなこともしょっちゅうでした」
それでも大木さんは、難題やボランティアからのリクエストに限りなく応えることにした。エイドでは寒い夜間の交代頻度を多くしたり、コース誘導では選手がまだまばらな時間帯に1人でいると寂しいからと複数名体制にしたという。また、このスタッフは何県から来てくれたからと同じ県の人を組ませたり、近い年齢の人を組ませたりと、細かく気を使って配置を考えたそうだ。
「第2回のことですけど、旦那さんが走っている女性がボランティアで参加していた。それでその奥さんを、旦那さんと会えそうな所に配置してみたことがあったんです。旦那さんがエイドにやって来るわけですよ。そしたら奥さんウルウルしちゃってね。僕としてはしてやったりなんだけど、なんだかこっちまで感動しちゃいました」
ロックフェスの経験から考える、ボランティア。
この大会、ボランティアの人しか使えない“通貨”があることをご存知だろうか? ボランティアにも食事が提供されるが、第1回大会はコンビニ弁当だった。
「なんかそれも寂しいなぁ……と思ったんです。そこで、第2回からケータリングを頼んだんですけど、そのケータリングで使える専用通貨を勝手に作りました。1枚が500円。好きなものを買って食べてもらいたいと思ったので」
実際、ケータリングで売れた食事は3日間で800食を超えたという。しかし、なぜここまでボランティアに対して気を使うのだろうか? そこには、フジロックフェスティバルや朝霧ジャムなど、音楽フェスの運営に携わっていた大木さん独特の思いがあった。
「フェスは、アーティストと観客と運営スタッフの3つの関係性で成り立ちます。UTMFをフェスとして考えた場合、選手はお金を払って走っていますからオーディエンス。じゃあ、ボランティアはって考えると、彼らもオーディエンスだと思ったんです。であれば、彼らも楽しませなきゃいけないわけです。決してスタッフじゃないと」
お金を払って雇ったスタッフならば、怒ったり一方的に指示をしても、対価を払うことで両者の関係性は成立する。しかし、ボランティアはそうではない。
「ボランティアの人に、それなりの楽しさを作ってあげることが僕らの仕事だと思うんです」