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オシムが見たワールドカップ決勝戦。
「ドイツはサッカーの理想を見せた」
posted2014/07/30 11:00
text by
イビチャ・オシムIvica Osim
photograph by
Sports Graphic Number
最新号が配信されました。7月28日配信号の内容を一部ご紹介します。
▼Lesson.84 目次
【1】 〈今週の「オシム問答」〉
「ドイツに盲目的に追従するのではなく、分析して取り組むべき」
【2】 〈オシムとの対話 Chapter.1〉
「ドイツは意思の力とフィジカルで質の高いプレーを維持し続けた」
【3】 〈オシムとの対話 Chapter.2〉
「出自は関係なく、ドイツの選手のすべてが存在感を示した」
【4】 〈オシムとの対話 Chapter.3〉
「日本代表が唯一批判されるべきは、効率を欠いていることだ」
【5】 〈オシムの教え〉
「メッシ、ロナウド……彼らは凄いが、ひとりだけでは小さすぎる」
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【3】 〈オシムとの対話 Chapter.2〉
「出自は関係なく、ドイツの選手のすべてが存在感を示した」
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世界チャンピオンを決めるのにふさわしい試合だった。
(決勝戦後の電話にて)
――元気ですか?
オシム:ああ、元気だが。
――いい試合でしたね。
オシム:スペクタクルでも美しくもないが、興味深い試合ではあった。
――それでも、とてもレベルの高い試合でした。
オシム:世界チャンピオンを決めるのにふさわしい試合だった。それこそが大事なことだ。チームと選手の動きを最後まで見なければならない。それが難しい。90分でなく120分続くとなるとなおさらだ。
――アルゼンチンが厳格にプレーしたので試合は均衡しました。
オシム:とても拮抗していた。ドイツは延長のはじめにアドバンテージを得たものの、試合そのものは最後までバランスが取れていた。ただそこで、アルゼンチンは少しミスを犯すようになった。
こうした試合では、ドイツに一日の長があるのは間違いない。彼らのシリアスなクオリティと走る力、存在感の強さは模倣することが難しい。しかしどこもこんな風にこそプレーをするべきだ。
先日も話したが、ドイツはチームの構成でも多彩だった。出自が外国に求められる選手がチームに10人以上いた。彼らがチームに大きな影響を与えていた。彼らは自分たちの生活を確立しなければならなかったからだ。家族をドイツで養わねばならない。その要求は、他の選手たちよりも切実だ。そこが若手の育成とうまく繋がった。
ドイツ人は元々ディシプリンがあり、働く環境も条件も整っている。仕事もきっちりとこなす。彼らに欠けていたのはアイディアでありテクニックだった。しかし今、彼らはすべてを満たした。エジルやケディラら親たちが外国出身の選手たちが加わったことで。
ドイツはひとつのフロンティアを切り開いたといえる。
――その集大成がこのドイツ代表であるわけですね。
オシム:二つの面でシリアスにならねばならない。ひとつが育成だ。そしてもうひとつがチーム構成だ。彼らがひとつにまとまってプレーすると、とても危険なチームになる。自分のためだけではない。家族や友人のためにも戦わねばならないからだ。
だから以前のドイツに比べると、今はチームを作るのがずっとたやすい。彼らはすでに経済的な地位は確立しているが、ドイツ人以上にドイツ人であるのを示すことを求められている。それがドイツのアドバンテージとなり、彼ら自身もそこをよく理解している。
――たしかにドイツ代表は、人種と民族の融合が今、起こっています。
オシム:10人近くそんな選手がいたら大きなアドバンテージだ。元から住んでいるドイツ人たちも、彼らから多くを学ぶ。ドイツ人としてどうシリアスに行動しなければならないのか。ディシプリンをどう身に着けるのか。どうやって働くべきなのか。それらがピッチの上で見られた。全員がフィジカルとディシプリン、メンタルの面で高いレベルにあり、存在感を示し続けた。出自がどこであるかに関係なく、選手のすべてがだ。
――ドイツはひとつのモデルを作りあげたといえるのでしょうか?
オシム:生活のあり方も含め、ひとつのフロンティアを切り開いた。家族や友人との生活のあり方だ。どこの国にとってもモデルになる。積極的に利用すべきだし、ドイツのようにやっていくべきだ。
――そうかもしれません。
オシム:彼らのアドバンテージであり、選手たちは買われたわけではない。(メガクラブのように)高い値段で移籍してきたわけでもない。ドイツに生まれ、ドイツで育った選手たちだ。ドイツの文化と社会の中で成長してきたことがとても大きい。
この続きは、メルマガNumber「イビチャ・オシムの『オシム問答』」で
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