ブラジルW杯通信BACK NUMBER
「日本スタイル」は攻撃だけじゃない。
4年前の“勝利への執念”を思い出せ。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2014/06/14 13:45
4年前の南アフリカW杯初戦、本田圭佑のゴールでカメルーンに勝利した日本。低かった前評判を覆し、決勝トーナメントに進出する快進撃はこの時から始まった。
聞こえてきた「あのサッカーに未来はない」という言葉。
「あのサッカーを続けていても日本のサッカーに未来はない」
南アフリカ大会での戦いについて、代表選手たちがそんなふうに話し始めたのは、2012年秋の欧州遠征あたりだったと思う。ブラジル相手に0-4と敗れはしたものの、「自分たちのサッカーをぶつけられた」という手ごたえが、ザッケローニ監督率いる現代表の選手たちに自信を与えたのだった。
岡田監督のあと、日本代表の指揮官となったザッケローニは、岡田ジャパンがやろうとしながらも、W杯直前に手放したサッカーのベースを継承し、アジアカップ優勝という好結果を残した。試行錯誤の時間はあったものの、「ザッケローニ監督は、本当にブレない」と岡崎慎司の言葉通り、「日本のスタイル、サッカー」を積み重ねてきた。
「コンフェデのときに、うまく行かなくて『今までやってきたサッカーで良かったのか』と考えさせられることもあった。でも、あの、南アフリカでの悔しさがあったから、このサッカーを絶対に貫かなくちゃいけない。自分たちのサッカーで勝負していく。世界と渡り合っていくと、強く決めました。
本番を明日に控えても、本当に驚くほど落ち着いているんですよ。さっき、スタジアムへ来るバスの中で、その理由を考えたんです。そして『最高のメンバーと巡り合えて、この4年間やってきた。そして生み出されるチームとしての自信があるから。このメンバーの存在が僕に落ち着きをもたらしている』と思ったんです」
長友が穏やかな表情で語った。しかし、その目は強く、言葉には力がみなぎっていた。
「このW杯で、日本の未来のサッカーを示したい」
大会直前の3戦で全敗した4年前と、3連勝の今回とでは、チームの状況が違うのは当然だが、初戦前日の選手たちの表情からは落ち着きと、自らへの期待感が伝わってきた。
6月12日の取材で本大会について、長谷部誠も次のように話している。
「もちろんチーム状態という部分では、4年前とは多少異なる部分もありますね。初戦を前にして、前回同様にわくわくした楽しみがあります。前回は自分たちのサッカーを追い求めて、直前で、多少なりとも戦術を変えてやりました。でも、この4年間は自分たちの、自分たちにあった、自分たちが世界で勝つためのサッカーを追求してきました。
強豪といわれる国には、ずっと伝統として貫いてきたサッカーがあると思うんです。そういうものを作り上げたいという気持ちがあった。そのサッカーをずっと積み上げてきたので、このW杯で自分たちが日本のサッカー、未来のサッカーを示したいと思います。これから日本の未来は、『このサッカーで戦っていくんだ』と。そういう意味で、積み上げてきた日本のサッカーを、どれだけW杯で表現できるのか、楽しみは大きい」