サッカーの尻尾BACK NUMBER
“悪い時のバルサ”だったバイエルン。
レアルに大敗、ポゼッションの限界か?
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byAP/AFLO
posted2014/04/30 11:25
ボール支配率は36%、パス成功数はバイエルンの半分にも満たなかったが、試合を思い通りに進めていたのはマドリーだった。ラモスは完璧な守備に加え2得点の活躍。
アリゴ・サッキと編み出した4-4-2という結論。
セットプレーだけではない。2試合を通してマドリーの守備組織は常にコンパクトだった。
ポゼッションでは2戦ともバイエルンに大きく上回られたが、決定機を作られる場面は皆無。マドリーは最後の局面で要所を抑えていたわけだ。
以前よりも守備が安定した理由のひとつが、4-4-2へのスイッチだった。アンチェロッティは国王杯決勝のバルサ戦からこれを採用しているが、バイエルン戦はあのアリゴ・サッキと話し合って決めたという。
「バイエルンのようなポゼッションベースのチームには、ライン間を抑えることが大事だった。そのためには中盤に4枚置く方が都合がよかった」
かくして最終ラインの前には4枚が綺麗な横一列に並んだ。右からベイル、モドリッチ、シャビ・アロンソ、ディマリア。ベイルとディマリアはサイドバックと連携して、バイエルンの強みであるサイドからの攻めに蓋をした。
攻守に躍動した第1戦のコエントラン。リベリーを完封した第2戦のカルバハル。サイドバックの好調もあいまって、4枚の2ラインが90分間を通じてコンパクトな陣形を保てたことは、バイエルンの攻撃の無効化に繋がっている。
「世界一速いCBでもマドリーのカウンターは防げない」
攻撃面では、カウンターのキレが第1戦を上回っていた。
「第1戦よりも効率的だった」とアンチェロッティは振り返る。
「ボールを大きく蹴り出すのではなく、グラウンダーで繋ぎ、FW陣のスピードを活かすことができた」
自陣からベンゼマ、ベイル、ロナウドと渡って決まった3点目は、まさにカウンターのお手本だ。
バイエルンはマドリーがこの手の攻めを仕掛けてくることは百も承知していたはずだ。しかしグアルディオラは「世界一速いCBをおいてもマドリーのカウンターは防げない」と言い、ポゼッションを保つことで相手の攻撃の回数を制限しようとした。まさにグアルディオラの哲学である。
しかし、90分間ボールを支配することは不可能だ。この日のように、数少ないチャンスを決められたら……。