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枠内のベストより、心の思うまま……。
浅田真央、世界選手権へ感謝と共に。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2014/03/25 10:30
ソチ五輪のシングル、浅田真央のフリープログラムは世界中を感動の渦に巻き込み、多くのトップスケーターたちから賞賛の声があがった。
鮮烈な4分間だった。
浅田真央の、ソチ五輪でのフリーは、今思い返してみても、ただそうとしか表しようがない。
浅田はソチ入りしたあと、苦しみ続けた。団体戦のショートプログラムは、「予想していたよりも緊張してしまって」トリプルアクセルで転倒し、思うような演技とならなかった。
一度アルメニアへ移動して調整したあと、シングルのショートではトリプルアクセルの失敗のほか、トリプルループがダブルになるなど、精彩を欠いた。
「体がうまく動かなくなりました」
その原因を、こう分析していた。
「オリンピックは2回目なので、一度経験することで分かることもたくさんあると思うんですけど、逆にそれが良い方向に行かなくて、自分の中でうまく解消できていなかったんだと思います」
追い込まれた状況での底力を生んだ浅田の姿勢。
五輪はバンクーバーで一度経験している、知っているからこそ、かえってオリンピックという舞台の重さに囚われたのかもしれない。そう示唆しているようだった。
だが浅田は、そのままでは終わらなかった。それがフリーの4分間だった。
大舞台の重圧に押し潰されそうになりながら、最後ははねのけた。
勝負強さ、あるいは精神の強さという言葉ははまらない。追い込まれた状況で表れる底力とでも言うべきものかもしれない。
それを育んできたのは、やはり浅田の姿勢だろう。
'05年のグランプリファイナル優勝など、広く世間に知られるようになったシーズン以来、浅田が発してきた数々の言葉を思い起こせば、常に一貫した姿勢を持っていたことにあらためて気づく。