プロ野球亭日乗BACK NUMBER
マー君“初体験”のメジャー流調整。
「物足りなさ」こそ、順調な証し。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byAFLO
posted2014/02/21 10:45
サバシア、黒田に続く3番手としての起用が濃厚な田中。オープン戦初登板は3月3日・ナショナルズ戦、メジャーデビューは4月3日のアストロズ戦になる見込みだ。
いまは物足りないくらいの方がいい。
ニューヨーク・ヤンキースに入団した田中将大投手の取材でキャンプ地の米フロリダ州タンパに入ると、いきなり田中の調整の遅れを心配する声が聞こえてきた。
田中は新ポスティング制度の締結が遅れたことから、同制度を使ったメジャー移籍の正式契約が年明けまでずれ込んでしまった。そのため本格的な自主トレに入ったのも1月に入ってから。当初は古巣・楽天の室内練習場で元同僚たちと汗を流したが、2月になるとチームがキャンプインで移動。練習相手もいないため、軽いキャッチボール程度の調整しかできなかった。
例年に比べると、明らかに調整ペースは遅れ気味でのキャンプインとなった。
バッテリーキャンプ初日の2月15日にタンパ入りはしたものの、そこでもう一つ気になるのがチームからの投球制限だった。
田中が18日までの4日間で、ブルペン入りしたのは2回だけ。球数は32球と35球の合わせて67球と、ヘタしたら楽天時代に1日で投げ込んでいた量の半分以下に過ぎないのだ。
キャンプから徹底的な球数管理、投げ込みはご法度。
メジャーはキャンプから首脳陣が徹底的に球数を管理して、日本流の100球を超える投げ込みはもちろん御法度だ。そればかりかブルペンに入ることすら2、3日に1回と制限されて、投げられるのは30球程度と限定される。
日本で投げ込みによって肩を作ってきた投手にとっては、はなはだ物足りない調整しかさせてもらえないというわけだ。
このメジャー流調整と日本の投げ込み式の食い違いで、過去には西武からボストン・レッドソックスに移籍した松坂大輔投手(現ニューヨーク・メッツ)が首脳陣と抜き差しならない確執を生んでしまったことも記憶に新しい。
そんなことは田中も十分に承知なのだろう。
「こんなもんだな、って思ってやっていくしかない」
この調整法に面食らいながらも、何とか受け入れてその中で状態を上げていくことに必死の様子なのだ。