「たまたまJTに声をかけてもらったから、じゃ行きますみたいな感じです。プレーできる環境があれば、どこにでも行こうって」

　スイスのボレロ・チューリッヒから、1年ぶりにJTに復帰したセッターの橋本直子は、そう言ってカラカラと笑った。

　言葉だけをとらえると根なし草のようだが、橋本は行く先々でしっかりと根を張り、求められる役割を果たす。2季前は竹下佳江の控えだったためリーグでの出場機会は少なかったが、代表選手が出場しなかった黒鷲旗ではチームを優勝に導いた。今年は8月から約2カ月間全日本に合流。初代表にも拘らず、練習中は積極的に意見を発し、試合中に他の選手たちを叱咤する場面もあった。

　今季のJTでは、29歳の橋本は最年長。若い選手たちを引っ張り、時にはお尻をたたき、嫌われ役も買って出る。

「2年前は竹下さんがいたので、私はホケーッとしてても大丈夫だったけど、今は若いチームなので、ちょっと頑張ってます（笑）。口うるさい人だなと思われていると思う。本当は言いたくないんです。でも海外で、年齢関係なくワーッと言い合っているうちに慣れて、思っていることは言うようになりました。言わなきゃ伝わらないから。それがJTのみんなにも浸透したらいいなと思う。だから、自分も言うけど、下の子にも、何かある？　と聞くようにしています。そういうのが私の仕事だと思うから」

欧州CLで力不足を痛感して、研究を重ねた配球。

　海外でコミュニケーション能力を磨き、ヨーロッパチャンピオンズリーグにも出場。そこで力不足を痛感したことで、配球について研究を重ねた。そんな橋本の経験を尾崎侯新監督は高く評価する。

「彼女はスパイカーを声で動かせるんです。試合の中で相手に対応して、瞬時にコンビの組み方を指示したり。やはり経験からくるものだと思います」

　高さでは劣るため、多彩な攻撃が生命線となる今季のチームは、自らのトスが鍵になると橋本は自覚している。しかしそんな重責も、今の橋本は笑い飛ばす。

「最近は、先のことは考えずに、一年一年、『今年はここでやるぞ』って集中してやれている。だから今、楽しいんだと思います。今季は最初にガーンと突っ走りたい。夏場からみんな頑張ってきた分、結果が出れば自信になると思うので」

　その言葉通り、JTは粘り強い戦いで開幕2連勝と会心のスタートを切った。

　JTの体育館の掲示板に、全日本選手3人のポスターが貼ってあった。

「あんたたちも頑張って、こんなふうに全日本選手になんなさい」と言って、橋本が貼ったのだという。

　若手選手の目線に立つ、経験豊かな司令塔がどっしりとチームを支える。

【2013/14　JTマーヴェラス　V・プレミアリーグ日程】

左から日程 対戦チーム 試合会場

12/21（土）vs.岡山  佐賀県総合体育館
12/22（日）vs.久光製薬 佐賀県総合体育館

1/11（土）vs.NEC 大阪府立体育会館
1/12（日）vs.パイオニア 大阪府立体育会館

1/18（土）vs.トヨタ車体 大田区総合体育館
1/19（日）vs.岡山 大田区総合体育館

1/25（土）vs.久光製薬 刈谷市総合運動公園体育館
1/26（日）vs.日立 刈谷市総合運動公園体育館

2/1（土）vs.NEC 東京体育館
2/2（日）vs.東レ 東京体育館

レギュラーラウンドは来年3月下旬まで開催しています。詳しい日程はJTマーヴェラスのオフィシャルHPでご確認ください。