フットボール“新語録”BACK NUMBER
元浦和コーチ・モラス雅輝の挑戦。
アジア人初の名門アカデミー入学!
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/11/18 10:31
フォルカー・フィンケ監督時代の浦和レッズでコーチ、通訳を務めたモラス雅輝。レッドブル・ザルツブルクのスタッフとして宮本恒靖と三都主アレサンドロの通訳も務めた。
講座は、100項目以上のアンケートから始まる。
サッカー界の常識を覆す授業も多い。
移籍ビジネスのテーマでは、育成型クラブの注意点が指摘された。
「南ヨーロッパでは『育てて売る』ことを戦略に掲げているクラブがあるかもしれませんが、ブンデスリーガでは『育てて売るビジネスモデルを戦略にするのは不健全だ』と。移籍金による収入は不定期なので、当てにできないからです。育成の最大の目的は『トップに選手を送り込む』こと。それを忘れてはいけないと」
この講座が興味深いのは、“人間分析”にも力を入れていることだ。
講座が始まった今年1月、まず行なわれたのはアンケート形式の自己分析だった。
「リーダーシップといっても、人それぞれですよね。たとえばファーガソンとヒッツフェルトでは、やり方がまったく違う。講座でまず求められたのは、自分を知ることでした。どこかの大学が開発したもので、100項目以上の質問に答えると、自分がどんなタイプなのかがわかる。それを理解したうえで、自分に合ったやり方を見つけるというのが、このアカデミーの出発点でした」
アンケートでは「徒歩と車、どちらで行くのが好きか」、「8割の完成度でもいいから早く物事を進めたいか」といった質問に対して5段階で好みを答える。
トップの宿命、バーンアウトを防止する方法とは。
スポーツディレクターや経営者は、クラブの規模が小さいほど多忙を極め、バーンアウト(燃え尽き症候群)に陥るケースが多い。それを未然に防止するためにも、自己分析が重要なのだ。バーンアウトになりやすいタイプには「自分と異なるタイプの部下を近くに置くべき」といったアドバイスが与えられる。
「これまではバーンアウトになっても隠すケースが多かったんですが、ラングニックがシャルケの監督を辞任するときに勇気を持って公表しました。自分を理解していたからこそ自分にストップをかけられた。講座では素晴らしい決断として評価されていました」
“人間分析”は自己に留まらない。部下に対しても性格をきちんと分析し、クラブ内の適材適所に置くことが求められる。人材マネージメントができなければ、クラブの持続的な発展は期待できないからだ。
「単純化して言うと、人目につくのが好きな人もいれば、裏方が好きな人もいる。さらに異なるタイプを同じ方向に向かせるために、どういう順番で説明し、どんな場を設けるかといったことを細かく学びます」