フットボール“新語録”BACK NUMBER
元浦和コーチ・モラス雅輝の挑戦。
アジア人初の名門アカデミー入学!
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/11/18 10:31
フォルカー・フィンケ監督時代の浦和レッズでコーチ、通訳を務めたモラス雅輝。レッドブル・ザルツブルクのスタッフとして宮本恒靖と三都主アレサンドロの通訳も務めた。
生々しい内部資料を元に、専門家が授業を行なう。
モラスは言う。
「テーマごとに、その分野の第一線で働く方たちが、講師やVIPゲストとして授業に来てくれます。これまでにもオーストリア・サッカー協会のスポーツディレクター、アウストリア・ウィーンのGM、ブンデスリーガのライセンス審査を行なう責任者といった方たちが来ました。教科書はなく、テーマごとに山のような資料を渡されます。それを読むだけでものすごい労力ですが(笑)、生々しい内部資料ばかりで本当に勉強になります」
たとえば、危機管理のテーマでは、2006年にシュトルム・グラーツの破産申請の処理に当たった担当者が講師を務めた。グラーツはオシム監督時代('94-'02)に大型補強を行い、人件費が膨らんでしまった。その失敗と再建の過程を追えば、危機対処のシミュレーションになる。
また経営戦略のテーマでは、過去にブンデスリーガが行なったプロジェクトの達成度を分析。1990年に打ち出された「ブンデスリーガ2000」という戦略計画のうち、何ができ、何ができなかったかを細かくチェックした。
「受講者同士の議論そのものが、教科書みたいな感じ」
もちろん授業は、知識を与えられるだけではない。議論にも重きが置かれ、「あなたはAというクラブのGMになりました。以下の人材を活用して経営を再建しなさい」といった設定が与えられ、解決策をみんなで議論する。
「受講者もそれぞれクラブや企業で働いているので、いろんな視点の意見が出てくるんです。たとえば2部クラブの副会長は『うちではこうなっている』とか。議論そのものが、スポーツマネージメントの教科書みたいな感じです」
他のスポーツの成功例も貪欲に研究し、大リーグの弱小クラブの戦略もテーマにあがった。
「ある球団が改革を始めたとき、選手の補強ではなく、クラブ力のアップに投資したという事例を学びました。スタジアムのインフラや顧客サービスの改善に力を入れて、どんなソーセージを売るかといった細部にまでこだわったそうです。他にはオーストリア・アイスホッケー連盟の組織作りも教材になりました」