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ヴァンフォーレ甲府はなぜ蘇ったのか。
城福が3バックに込めた「知」と「熱」。 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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posted2013/10/19 08:02

ヴァンフォーレ甲府はなぜ蘇ったのか。城福が3バックに込めた「知」と「熱」。<Number Web> photograph by AFLO

「我々は絶対J1に残るべきチームであり15位で終わるべきチームではないと常にそういう心構えを持っている」と語る城福。専用練習場とクラブハウスも完成し、J1定着への道を確実にしつつある。

 ヴァンフォーレ甲府が、脚光を浴びている。

 7月31日のJリーグ第18節、ベガルタ仙台戦を終えた時点で3勝10敗5分け。5月11日、清水エスパルス戦に敗れた後は泥沼の8連敗を喫するなど、順位は一時期、J2降格圏の16位まで落ちていた。

 ところが8月3日、セレッソ大阪に1-0で競り勝ったのを境に、チームは復調し始める。現在の順位こそ15位と一つ上がっただけだが、10月5日の横浜F・マリノス戦までの10試合を4勝2敗4分けで乗り切るなど、一気に息を吹き返してきた。

 しかもこの間、サンフレッチェ広島に2-0、鹿島アントラーズには3-0と完勝。浦和レッズや横浜F・マリノス相手にも引き分けに持ち込み、ファンや関係者を驚かせてもいる。

転機となったパトリックの加入と3バック。

 甲府に何が起きたのか。

 転機となったのはパトリックの獲得と、3バック(3-4-2-1)へのシステム変更である。

 7月18日、甲府は川崎フロンターレでなかなか出場機会に恵まれず、移籍先を探していた長身のブラジル人ストライカーを獲得する。これを踏まえて城福浩監督は、7月31日の仙台戦から3バックの採用に踏み切った。

 仙台戦は新システムを導入した直後ということもあり、後半には4-4-2に戻すことを余儀なくされた。試合も0-1の惜敗に終わっている。

 だが城福は改革を継続した。理由は明白。ナビスコカップも含めれば、仙台戦に臨む時点での成績は総得点20に対して失点が36。4バックのまま戦い続けることは、実質的に不可能になっていたのだ。

カンフル剤どころか、劇薬にも似たシステム変更。

 失点をできるだけ減らし、得点力を増やすための新たな方策を試みる。甲府に突きつけられていた課題を考えれば、5人で守る形に簡単に移行でき、カウンターアタックとの親和性が高いとされる3バックへの移行は、自然な流れにも思える。

 しかし実際には、副作用を覚悟で劇薬を処方したのに近い。

 そもそも4バックから3バックにスイッチするのは、チームを根本的に作り直すのと同義ともいえる。加えて甲府が採用した3-4-2-1は、サイドに張り出ている選手が1名ずつしかいないため、ウイングバック(3-4-2-1の4の両サイド)の消耗が激しい、ウイングバックの背後を突かれやすい、といった構造的な問題を抱えているからだ。

 それを承知で3バックのメリットを活かそうとするならば、構造的な問題を解消するためのアイディアを練った上で、ウイングバックをこなせるような能力の高い選手を確保し、時間をかけて新たな戦術を選手に浸透させなければならない。

【次ページ】 「不退転の気持ち」で3バック採用を決断。

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