リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
バルサ&レアルに次ぐ第3勢力、
新生ビジャレアルに注目だ!
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2010/08/27 10:30
ビジャレアルBから引き上げられたFWモンテーロ。昨季は32試合に出場し、10ゴールを挙げた
下部チームの若き才能を抜擢し、世代交代を促進。
ガリードはビジャレアルBの監督を長年務めてきた。'08-'09シーズンには、「1部に上がるより難しい」と言われるセグンダB(3部)からセグンダへの昇格を成功させた。元ビジャレアルBで、現在はレアル・マドリーBの一員としてモウリーニョからも高い評価を受けている21歳のFWファンフランはガリードについてこう語る。
「ボールを動かし、素早く相手ゴール前に攻め上がることを好む。そして怖いくらいに厳格で勤勉。ただし、誰に対しても常に公平なんだ」
ガリードがその厳しい姿勢でビジャレアルのベテランたちを蘇らせたことは昨季の巻き返しを見れば明らかだ。しかし、今季はイバガサ、ピレス、ジョレンテと経験豊富な30代を放出し、最終ラインの要であったゴディンもアトレティコへと移籍した。大幅な戦力ダウンと見るのが妥当だろう。
だが、私はそうは思わない。昨季終盤でトップチームに引き上げられて経験を積んだ若手たちが、“何か”を起こしそうだからだ。
各国の代表入りを果たした若手を各ポジションの要に。
今季のビジャレアルは、各ポジションに将来性豊かな若手を揃えている。ゴディンが抜けた最終ラインにはCBムサッキオがいる。洞察力と機動性に優れ、ボディコンタクトも強く、16歳にしてアルゼンチンの名門リバープレートでデビュー。未来のアルゼンチン代表の最終ラインを支えると目される。
中盤にはスペイン代表デビュー済みの守備的MFブルーノがいる。1対1に強く、パス捌きも巧みなレフティーは、代表でブスケッツとポジションを争うことになるだろう。ビジャレアルBの司令塔だったマティージャにも注目したい。細かいパス回しでゲームの流れを生み出すプレースタイルは、若き日のシャビと比べられる。
そして前線には、ビジャレアルの最終兵器モンテーロ。すでにエクアドル代表デビューを果たしているモンテーロの魅力は、何と言ってもドリブルだ。当たりの激しいセグンダにおいても彼は、3人のDFを難なく弾き飛ばしながら突破を繰り返していた。20歳前後の選手で構成されたビジャレアルBが昨季セグンダで7位という成績を残せたのは、このモンテーロの圧倒的な突破力によるところが大きい。
グアルディオラ監督を彷彿させるチーム活性化の手腕。
ムサッキオ、ブルーノ、マティージャ、モンテーロは皆、ビジャレアルB時代にガリードのもとでプレーしている。自ら指導した若手を抜擢し、台頭させる。これはバルセロナのグアルディオラ監督と、ブスケッツ、ペドロらBチームから引き上げられた若手という構図にそっくりだ。
若手主体で行なっているプレシーズンマッチの成績は、4勝2分け1敗と好調。公式戦初戦となったヨーロッパリーグ・プレーオフ第1節、ドニエプル(ベラルーシ)戦も5-0と快勝した。
ガリード率いる新生ビジャレアルへの期待は、ますます高まっている。