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プロ3戦目で日本ランク1位を圧倒!
“怪物”井上尚弥は何が凄いのか?
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byYusuke Nakanishi/AFLO SPORT
posted2013/04/17 11:30
次のデビュー4戦目で日本タイトルを奪取すれば、辰吉丈一郎と並ぶ最速記録となる井上。日本王者・田口も対戦を熱望しているという。
日本ボクシング界のホープ、井上尚弥が16日、後楽園ホールで行われたプロ3戦目で日本ライトフライ級1位の佐野友樹に圧勝した。怪物と呼ばれる20歳が、その実力を大いにアピールした一戦だった。
昨年10月にプロデビューしたばかりの井上は、デビュー前からその実力を高く評価されていた。根拠はアマチュア時代に残した輝かしい実績である。高校3年生で出場したインドネシア大統領杯で金メダルを獲得して世界選手権に出場。高校生にしてアマチュアボクシングの国内最高峰、全日本選手権を制し、ロンドン五輪の予選では五輪出場まであと一歩のところに迫った。身体が大人になり切っていない20歳前の選手としては、過去に例を見ない大活躍だった。
そうは言うものの、アマはアマ、プロはプロ、というのがボクシングの世界では常識だ。
プロで活躍できなかったトップアマは世界中に腐るほどいる。
ところが井上はプロの世界に身を投じてからも、評価は落ちるどころか、ますます絶賛されるようになったのだ。
世界王者でさえ、井上とのスパーリングを嫌がった!?
大橋ジムで井上と同門のWBC世界フライ級チャンピオン、八重樫東は驚きを込めた口調でこう語る。
「井上とは昨年、井岡一翔選手と試合をする前に何度もスパーリングをしましたが、とにかく強い。やられてしまう場面が何度もありました」
プロデビュー前の19歳が世界チャンピオンをたじろかせてしまう。大橋秀行会長が「八重樫が井上とスパーリングするときは、井上じゃなくて八重樫に作戦を与える」と言ったときは冗談かと思ったが、八重樫の話を聞くと真実味を帯びる。五輪金メダリストの村田諒太も「隙のないパーフェクトな選手。見習うところがたくさんある」とアマ時代の後輩を絶賛する。ほかにも「世界チャンピオンが井上とのスパーを嫌がった」など、怪物伝説は枚挙にいとまがない。