フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
サプライズ続きでフィギュア界騒然!
順位予想も難しい今季のGPシリーズ。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2012/11/06 10:55
演技力ではかねてから定評があった町田。4回転が完璧に決まれば、格上の選手達を脅かす可能性も。
「Anything can happen in figure skating.」(フィギュアスケートでは、何が起きるかわからない)とは、昔から言われてきたことだ。だが今季のGPシリーズほど、それを実感させるシーズンも珍しい。
11月2日から上海で開催された中国杯でGP初優勝をきめ、スケートアメリカの3位と合わせてGPファイナルへの出場権を手にしたのは町田樹だった。
熱心なフィギュアファン以外にはなじみの薄い名前だろうが、22歳の彼は新人ではない。2010年四大陸選手権の銀メダリストで、昨年の全日本選手権では4位だった実績を持つ選手である。
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だが彼が元世界王者の高橋大輔を破って、一番乗りでファイナル進出を決めるなど、誰も予想しなかったことだった。
昨年、トリノ五輪銀メダリストのステファン・ランビエルに振付の指導を受けるようになってから、表現力も急成長。2週間前にはスケートアメリカで初のGPメダルを手にし、一躍世界のトップ選手の仲間入りをした。
「よくあれで2位にとどまった」と、絶不調だった高橋大輔。
もっとも中国杯では「スケートアメリカと同じミスをしてしまった。大先輩に勝ったのは光栄ですけれど、もっと嬉しい優勝がしたい」と本人が語ったように、男子全体が不調な試合だった。今回の町田樹が出した優勝スコアは236.92。スケートカナダで3位だった織田信成の238.34よりも少し低い点数だ。
2位だった高橋大輔は、普段なら250ポイントは楽に出す選手である。だが今回の231.75は、本人の自己ベストの276.72より、およそ45ポイントも低い。4回転は2回とも回転が足りず、3ループで転倒。成功した3回転ジャンプは3つのみ、という演技で2位にとどまったのは、彼の基礎技術の高さと表現力、そして過去の業績があったからだろう。
「よくあれで2位にとどまった。自分でもびっくりしています」と苦笑した高橋は、不調の原因について「緊張感などがうまくかみ合わず、一番中途半端な感じになってしまった」とコメントした。