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バトンの勝利を影で支えた日本人、
今井弘が予選中に行った助言の効能。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byMamoru Atsuta
posted2012/09/07 10:30
マクラーレンのプリンシパル・エンジニアの今井弘。タイヤによって大きくレース結果が左右される近年のF1界において、マクラーレン優勝の陰には必ずこの人の活躍があった。
バトンの圧勝劇を支えた今井の鋭い知見とアドバイス。
バトンはQ1で2番手だったが、ハードタイヤを装着したドライバーの中でトップタイムをマーク。それでも、納得がいかない表情のままガレージに帰ってきたバトンを見ていた今井は、Q2が開始されるまでの間、バトンに内圧に関するレクチャーと、ドライビングに関するアドバイスを行った。
「Q2では、少しドライビングを変えてもらいました」と言う今井からのアドバイスで自信を取り戻したバトンは、Q2に入ると異次元のスピードでライバル勢を圧倒。自身3年ぶりのポールポジションを獲得する。
翌日のレースでも、バトンはライバル勢に一度も影を踏ませぬ、会心の勝利。レース後、マクラーレンが優勝したときにだけ着ることが許されているロケットオレンジシャツに身を包んでガレージから出てきた今井は、こう言った。
「楽勝のように見えるかもしれませんが、私にとっては内容の濃い2日間でした」