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一気に世界まで駆け抜けた酒井宏樹。
柏レイソル関係者の証言で綴る足跡。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2012/06/22 10:30
「ロッベンやリベリーと戦って、自分がどれだけやれるかが楽しみです」とブンデスリーガでの試合を心待ちにする酒井宏樹。2012-2013シーズンにおけるブンデスリーガの開幕日は8月24日。
「アジリティー、パワー、スピード、持久力、全て完璧」
選手としてのポテンシャルに疑いはない。ただし、それはまだ“ポテンシャル”という意味を超えるものではない。代表でライバルとされる内田篤人とは、ビルドアップや守備への切り替えスピード、戦術理解、あらゆる状況への適応力という点で、まだ大きく水をあけられている。例えば、仮にザッケローニが3-4-3システムを選択した場合、「4」の右サイドは内田に務まっても酒井には務まらない。
ただし、彼の武器である攻撃、特にクロスの精度とタイミングの良いオーバーラップについては、内田にも、それから酒井自身が初めて一緒にプレーした時に「敵わないと思った」と語る駒野友一にも決して引けを取らない。セットプレーでも力を発揮する体格の利は言わずもがな。柏でフィジカルコーチを務めるピメンテウも太鼓判を押す。
「アジリティー、パワー、スピード、持久力、どれもパーフェクトに近い。どんなフィジカルコーチでも、ああいう選手と仕事をしたいと思うだろうね」
酒井の能力は、レアンドロたち周りの先輩選手によって引き出された。
選手としての魅力と可能性については、キャプテンの大谷秀和にも言葉を求めた。
「アイツは昔からメンタル的に弱い選手でしたけど、ブラジル留学でタフになりました。試合に出ることで責任感も芽生えてきたし、注目される中でも、本人は常に謙虚にやってきたので。環境が変わっても人間が変わってないので、それが大きい。謙虚でいられる人間性が酒井の魅力ですね。まあ、海外に行ったら変わっちゃうかもしれないですけど(笑)」
それにしても、驚くべきはその成長の“スピード”である。
「ものすごく早かったですね(笑)。トントントンって階段を駆け上がっちゃって。ああいう人間もいるんだなって、酒井の成長を目の当たりにして思いました。ユース時代から能力が高かったことは間違いないけど、やっぱり、レアンドロに引き出された部分はある。ある意味、レアンドロの言うことを聞きながら成長したと思う。まあ、酒井のことを理解してくれる選手が近いポジションにたくさんいたので、それも大きかった」
自身も「酒井を理解する選手」の一人である大谷も、下部組織から在籍するクラブ生え抜きの一人だ。だからこそ、出てくる言葉も小見の意見と重なる。
「ここで育って、プロとして活躍して、それが世界に認められたということは、レイソルにとっても大きな一歩。だからもちろん、レイソルの代表であることも忘れないでほしい。これから酒井に続こうとする選手たちが、同じようにレイソルから出てくるだろうから。そういう選手の見本になるような活躍を見せてほしい」