サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
史上最強の第3GK川口能活の加入で、
“勝利に執着する”日本代表に期待!!
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/05/11 12:05
川口能活の名がアナウンスされたとき、会見場を埋め尽くした記者たちからどよめきが上がった。
三浦カズ、中村俊輔、久保竜彦という過去3大会のような大物の落選はなかったが、今回、サプライズがあったとすれば、川口の復帰だろう。
岡田監督はいままで、前田遼一や小笠原満男、佐藤寿人など、結果を出している選手になかなかチャンスを与えず、日本代表を代表チームというよりクラブチームのような選手起用で強化してきた。
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そのことについて筆者は常々疑問を覚えてきたが、川口の復帰については評価したい。
岡田武史監督は会見の場で、川口を第3キーパーとして指名したと語った。第3キーパーがピッチに立つチャンスは、ほとんどない。つまり彼は、精神的支柱として期待されている。
ドイツ大会の二の舞を恐れた岡田監督の決断とは?
日本代表はそもそも年功序列が重んじられる組織であり、リーダーが生まれ難いといういかにも日本らしい土壌がある。
選手たちの年齢差が小さければ、なおさらだ。ただでさえ大人しい選手たちはだれも先頭に立とうとせず、リーダーになろうとした選手は下手をすれば反発を招く。4年前のドイツ大会では、中田英寿が浮いてしまった。
あのとき中田が仮に三十代半ばの大ベテランだったら、悲劇は起こらなかったかもしれない。
ドイツ大会の二の舞を恐れた岡田監督は、その処方箋として川口を抜擢した。
34歳の川口はチーム最年長であり、実績、人柄ともに申し分ない。彼がまとめ役になることを不快に思う選手はいないだろう。
思い出すのは'04年アジア杯の藤田俊哉と三浦淳宏の存在。
いまの日本代表の選手たちは、川口という選手の偉大さを知っている。その川口が自分を捨てて、チームのためにベンチで声を張り上げる。練習では率先してボールや水を運び、だれかれともなく声をかける。
その振る舞いに、チームメイトは胸を打たれるのではないだろうか。黙々と働くベテランの背中から、ワールドカップで戦うことの意味を学ぶのではないだろうか。
また、最年長でレギュラー争いと無縁の川口は、だれとでも会話し、だれとでもメシを食える「長老」的な立場にある。息がつまりがちな集団生活を和らげ、同時に士気を高めてくれるのではないだろうか。
思い出すのは、逆転逆転、また逆転で優勝に輝いた'04年アジアカップ中国大会だ。このときも出番に恵まれなかった年長組の藤田俊哉、三浦淳宏が率先してチームを盛り上げ、陰の功労者といわれた。
川口の復帰によって、このチームの文化は変わるかもしれない。そんな期待感もある。