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“背負った”斎藤佑樹はどこまで強い?
条件が整った田中将大との再対決。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/04/11 12:40
最近はあまり聞かれなくなった“ハンカチ世代”という呼び声。同い年には広島の前田健太もおり、先日のノーヒットノーランの記録に対して斎藤は「自分もいつか完璧に抑える試合で終わってみたいですね。同期にそういう選手がいるのは刺激になります」とコメントしている。
いよいよである。
4月13日の金曜日、札幌ドームの日本ハム対楽天戦で実現するであろう斎藤佑樹と田中将大の投げ合い、いわゆる「マー佑対決」のことだ。
実は、昨年9月10日に一度だけ実現した「マー佑対決」は、周りが騒ぐほど、気持ちが入らなかった。
というのも、あまりにも2人の立場が違いすぎたからである。
その時の試合は、4-1で楽天が勝利。斎藤は、結果的にその試合でプロ入り初完投したものの、それまでの試合傾向から行くと危うくなったらすぐにマウンドを降りてしまうだろうなと思っていた。
つまり、田中対斎藤というよりは、田中対「斎藤+ブルペン陣」という構図だった。1人対複数のケンカのようなもので、それでは対決とは呼べない。
奇しくも、今季の開幕戦で斎藤が「背負ってます」と語ったが、そう、昨年までの斎藤はまだチームを背負っていなかった。
いや、もっと言えば、斎藤は早稲田大学時代も決してチームを背負っているとは言えなかった。正確には、背負わせてもらえなかった、と言った方がいいかもしれない。
大学時代には見えにくかった、チームを“背負った”ピッチング。
毎シーズン開幕投手を務めていたものの、後ろには常に豊富なブルペン陣が控えていた。そして、ちょっとでも疲労の色が見え始めると、もう斎藤の姿はマウンドにはなかった。
大学の4年間では、高3の夏に甲子園で7試合をひとりで投げ切った頃のような雄姿を見ることもなく、当時のタフネスぶりを確認する機会はとうとう一度も巡ってこなかった。
「大事にしているのか、大事にしていないのか、わからない」
その頃、斎藤に近い関係者が、そうぼやいていたことがあったが、まさにその言葉通りだった。