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戦略家なのか臆病者なのか?
1点で“快勝”したバイエルンのやり口。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byBongarts/Getty Images
posted2010/04/22 11:40
2人退場した広いピッチをロッベンのドリブルが切り裂く!
10人対10人。ピッチから2人も少なくなり、大きなスペースができたのだから、ドリブラーのロッベンが大人しくしているわけがない。69分、ティモシュクのショートパスを受けると、中央から約30メートルのミドルシュートをネットに突き刺した。
ここからがファンハールの「ひねくれ采配」の真骨頂である。
ファンハール監督はロッベンに代えて、フィジカルの強いアルティントップを投入する。つまり、追加点よりも、失点しないことを優先したのだ。この弱気な交代にロッベンは唖然とし、不満げにピッチを去った。試合はファンハール監督の狙いどおり、1対0のまま終わった。
試合後、ファンハール監督はしてやったりという表情でTVインタビューに登場した。
「今日のスコアに非常に満足している。今のバイエルンなら、どんな状況でも必ず1点は取れる。だから、もし今日、相手がアウェイ・ゴールを取れなければ、うちにとって大きなアドバンテージになると考えていたんだ。次の試合で、リヨンは苦しくなるはずだ」
確かにバイエルンが敵地で行われる第2レグで1点でも取れば、リヨンは3点取らなければいけなくなる。ファンハール監督の言うとおり「バイエルンはアウェーでも1点は取れる」という計算が成り立てば、もう決勝に進んだも同然だ。
しかし、そう計算が、うまくいくものだろうか。
優れた戦略家なのか。それとも慎重すぎる臆病者なのか。
その答えは第2レグの結果が、下してくれるだろう。