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村田、杉内らの大型補強で強いはず!?
巨人の戦力データ分析で意外な結果。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/03/12 10:31
桑田真澄氏が21年間背負った背番号18を受け継いだ杉内。オープン戦でも好投を見せ、巨人の新エースとして存在感を増しつつある。
放出したラミレスのほうがあらゆる面で勝っている。
'10年……打率.257、得点圏打率.250、OPS.762(長打率.448、出塁率.314)
'11年……打率.253、得点圏打率.196、OPS.744(長打率.423、出塁率.321)
村田と入れ替わるように横浜に移籍したラミレスの過去2年の成績は村田よりいい。
'10年……打率.304、得点圏打率.325、OPS.951(長打率.613、出塁率.338)
'11年……打率.279、得点圏打率.302、OPS.775(長打率.453、出塁率.322)
外野守備、走塁の拙劣さや、今年38歳になる年齢的衰えが嫌われ、契約に至らなかったわけだが、村田の三塁守備や走塁もラミレスと変わらないレベルだ。バッティングをくらべれば、ラミレスの安定感や勝負強さのほうが遥かに勝っている。
清武が「独占手記」で書いた、「渡邉巨人は再びかつての場当たり的な補強に走ろうとしているようだ」がリアルに胸に迫ってくる。補強の成果が多くないこれまでの現実を見れば、球団は清武の言葉を冷静に考えるべきだった。育成を引き続き行ないながら、補強も同時に行なう、という発言が出てくるあたり、どちらにも舵を切れない覚悟のなさも浮き彫りになる。
先発投手の軸となる杉内俊哉はセの打者にも通用する?
さて、先発投手の大型補強、杉内について見てみよう。
'05年以前、パ・リーグから移籍してきた選手は「初めてのセ・リーグで大丈夫だろうか」とよく言われた。張本勲(日本ハム→巨人'76年)、落合博満(ロッテ→中日'87年)、清原和博(西武→巨人'97年)でさえ、緻密なセ・リーグの投手をパ・リーグのときのようには打てない、と言われた。
打者を例に出したのは、パからセへの大物移籍が昔から打者のほうが多かったためだが、投手も基本的に同じように言われてきた。大ざっぱな野球に慣れているパの投手が、緻密なセの打者に通用するだろうか、と。
こういうネガティブな意見が最近、聞かれなくなった。'05年からスタートした交流戦で直接対決が行なわれ、力関係がわかってきたためだ。ソフトバンクからFA移籍した杉内が交流戦でどのような成績を挙げてきたのか振り返ってみよう。