野球クロスロードBACK NUMBER
プロ野球のキャプテンの役割とは?
新主将9名が背負う、チームの行方。
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph byTamon Matsuzono
posted2012/03/07 10:30

今季、横浜から入団した31歳の村田修一選手と4番の座を争うことになった阿部慎之助。あるオープン戦で4番に座った村田は「後ろにいい打者がいるのは自分にもプラスになる。阿部さんがいるのは心強い」とコメントしている。
キャプテン制度で変わった巨人とソフトバンク。
それを証明してみせたのが、巨人とソフトバンクだ。
巨人は、'07年に阿部をキャプテンに任命してから変わった。
彼は、捕手という負担がかかるポジションながら、この役割をうまく利用している選手だ。捕手としては投手陣に自分の意思をはっきり伝え、褒めるときは褒め、叱るときははっきりと叱りつける。しかし、キャプテンとしてそれを仰々しく表現することはない。
ADVERTISEMENT
「個人的に一番意識していることは下を向かないことです。キャプテンである自分が下を向いてしまっては、若い選手を始めチーム全体がそうなってしまう。なので、僕が打てなくて試合に負けてしまっても、常に上を向いて『明日も頑張ろう』とみんなに声をかけるように心掛けています」
この年から巨人はリーグ3連覇を果たし、'09年には日本一となった。阿部の背中を見続け、翌年から選手会長となった内海哲也は、「投手陣を支えられるピッチャーになりたい」と自分を律するようになり、昨季は自己最多の18勝をマークした。阿部の上を向き続ける姿勢が、チームを成長させているのだ。
秋山監督から受け継いだ小久保のキャプテンシー。
ソフトバンクの小久保も、阿部同様、姿勢を大事にしている。
巨人時代の'06年に1年間、キャプテンを務めた経験はあるが、どちらかというと秋山幸二が監督に就任した'09年以降のイメージのほうが一般的には強いだろう。
彼は、ダイエー(当時)の初代キャプテンとなった秋山の、練習に取り組む姿勢を見ながら育ってきた経験を今、生かしている。
「自分は、秋山さんたちから学んできたことを率先してやっていくだけで、後輩たちに押し付けようとは思っていません。ただ、選手というのは先輩の姿を見て育っていくものだと思っています。僕のやり方に共感してくれるのなら同じようにやってほしいですね」
ベテランでありながら率先して声を出す。怪我をしても痛みに耐えながら試合に出続け、結果を出す。秋山政権初年度の'09年こそ3位だったが、小久保の意思は徐々にチーム全体に浸透し、翌年からリーグ連覇。昨年は8年ぶりの日本一を手にした。