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ヤンキースの評価は次の次で……。
松井秀喜が格安年俸で勝負に出る!?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/02/20 10:30
2月上旬、広告関係のイベントに参加して、子供たちの野球教室を見守る松井秀喜選手。国内復帰はあり得ないということで、メジャー球団からの吉報を待ちつつ、日本国内でトレーニングを続けている
メジャーリーグではすでにスプリング・トレーニングが始まっているが、松井秀喜の所属先が決まっていない(2月17日現在)。
松井ファンとしては心配で仕方がないだろうが、今季のユニフォームが決まっていないのは松井だけではなく、同じような境遇に立たされている選手はたくさんいる。
2月上旬には、ヤンキースが松井獲得に興味を示しているとアメリカで報道され、私もその話が前進することを望んだ。
松井という選手は、伝統的、王道を歩む球団のユニフォームを着た時にこそ、実力以上のものを発揮すると思うからだ。
しかしバレンタイン・デーを過ぎても進捗は見られない。なぜ、話が進まないのか、この状況を概観してみよう。
「可処分所得」を増やしたい倹約ヤンキース。
ヤンキースは贅沢な球団と思われがちだが、近年は緊縮アプローチを採っている。コストに見合わない選手に対しては、容赦なく放出する。2月に入ってホットな話題になって来たのが先発のA・J・バーネット。バーネットの来季の年俸は1650万ドル。日本円にして10億円を超える選手だが、昨季の成績は11勝11敗、防御率は5点を超える。
ハッキリ言って不良債権化しており、ヤンキースとしてはかなりの部分を負担してでも、放出したい。そこでパイレーツと交渉を重ねている模様だが、数億円でも浮かせられれば、課題とされている左の指名打者の資金に回せる。そこで、松井の噂が浮上したというわけだ。
古巣にラブコールを送るジョニー・デーモン。
ヤンキースがリストアップしている選手は、ラウル・イバニェス、ジョニー・デーモン、そして松井だ。この3人の昨季の成績を比較してみると……。
打率 | 本塁打 | 打点 | 出塁率 | 長打率 | OPS | |
---|---|---|---|---|---|---|
イバニェス | .245 | 20 | 84 | .289 | .419 | .708 |
デーモン | .261 | 16 | 73 | .326 | .418 | .744 |
松井秀喜 | .251 | 12 | 72 | .321 | .375 | .696 |
3人とも決定打には欠けるが、中ではデーモンがOPS(出塁率と長打率の和)ではいちばんいい。
そのデーモンは3000本安打まで277本と迫っており、なんとしてもあと2シーズンはプレーしたい。3000本安打は殿堂入りを確実にするからだ。
ただし、昨季はデーモンが3000本を意識するあまり、ストライクゾーンから外れた球に手を出し過ぎている――という分析がなされており、それがマイナスに働いている。
デーモンはCBSのジョン・ヘイマン記者との電話取材で、「ヤンキースに自分はフィットすると思う」と話しており、古巣ヤンキースからの電話を待っているという。