プレミアリーグの時間BACK NUMBER
プレミア優勝候補筆頭となったマンC。
その驚愕の変貌ぶりを徹底検証する。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2012/01/03 08:01
復調著しいアーセナルとの激戦を制し、首位を守ったマンC。アグエロ、ジェコ、バロテッリと得点トップ10に3人がランクする攻撃陣は圧倒的。あとは守備の充実が課題
プレミアリーグにおけるマンチェスターCのステータスは、1年前の「トップ4有力候補」から「優勝候補筆頭」へと変った。昨季をポイント数では2位と並ぶ3位で終えたチームに、新たに総額100億円近い大型補強が施されていたのだから、妥当な変化ではある。
しかし、堅守でポイントを重ねた集団が、一気に“ゴールマシン”と化すとまでは想像できなかった。ロベルト・マンチーニ監督が、昨季末に得点力アップの必要性を強調していたとはいえ、開幕から4カ月間のリーグ戦16試合で、合計50得点の荒稼ぎは驚異的だ。昨季は、9カ月間の38試合で60得点だったと言えば、その豹変ぶりが理解してもらえるだろう。
「変身」の鍵は、昨季のような受身ではなく、能動的な守りにある。新加入のサミル・ナスリは、「モデルはバルセロナ。全員が敵陣内でプレッシャーをかけ続ける意識を持ってやっている」と言う。
今季のマンCは守備に転じても攻める姿勢を失わない。
今季のマンCは、ボールを失った後も、嵩にかかって敵に襲い掛かる。特に、相手SBに対しては容赦がない。攻めては、タッチライン沿いのワンツーで手玉に取り、守っても、数的優位からボールを奪って攻撃に転じる。序盤戦のハイライトとなった第9節マンチェスター・U戦(6-1)でも、こうした姿勢が、事実上の勝利を決めた最初の3ゴールを呼んだ。
この一戦で先発を外れたナスリには、移籍1年目にしてリーグ得点王を争うセルヒオ・アグエロに比べ、新戦力としてのインパクトに欠けるとの声もある。だが、10月の段階でアーセナルでの昨季と同じ6アシストを記録済みだったのだから、本人が「感触はいいし、サッカーも楽しい。これからもっと良くなる」と、自信を仄めかすのももっともだ。
アーセナルとの一戦で際だったマンCの変貌ぶり。
そのアーセナルとの第16節(1-0)では、今季の変貌ぶりが改めて確認された。国内随一のパスサッカー集団とは、昨季1月の前回対決で0対0に終わっていた。引分けも辞さずに引いて守ったマンCの戦法が、消極的だと非難された一戦だった。
ところが今回は、最終的には1得点のみながら、堂々と90分間の攻め合いを制して3ポイントを奪っている。陣形こそ昨季と同じ4-2-3-1だが、各自の意識は、後方ではなく前方にあった。ダブルボランチの一角を担うギャレス・バリーからのパスに、左SBのパブロ・サバレタが走り込み、先制点間違いなしと思われたクロスを放り込んだのは、まだ前半8分過ぎのことだった。逆サイドでは、右SBのマイカ・リチャーズが、終盤にも爆走から相手ゴールに迫った。