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<私と旅ラン> 茂木健一郎 「美しい景色こそ脳の活力です」
text by
NumberDo編集部Number Do
photograph byKenichiro Mogi
posted2011/10/13 10:30
100人いれば、100通りのカタチがそこにはある。
走りながら景色を眺めるのも、仲間との時間を楽しむのも、
もちろん美味しい食べ物に舌鼓を打つのもよし。
今回は気になるあの人……脳科学者・茂木健一郎さんの、
「旅+ランニング」を特別に教えてもらいました。
最近は歩くことも多くなっているんですけど、歩くのにも、走るのにも、僕はコースどりにうるさいんですよ。カナダのプリンス・エドワード島とか、バンクーバーとか、色々走ったけど、ベストコースは、ケンブリッジにあるグランチェスター・メドー。作家のジェフリー・アーチャーが住んでいるグランチェスターという小さな町にある牧草地です。未舗装の小路があって、近くのケンブリッジ大学の学生もよくランニングしています。犬を散歩させてる人や、牛もいるし、走る馬にも出会える。その横のケム川を船が下ってたりして。小説家のバージニア・ウルフや哲学者のルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン、数学者のバートランド・ラッセルなども愛した非常に知的で由緒ある場所です。
行きは木や緑があふれていて、帰りはケンブリッジ大学の塔なんかも見える。とても気持ちいい景色が、“源泉かけ流し”状態で続くんです。
「才能を育むには美しい風景のなかにいなければいけない」
昔、ケンブリッジに留学していた藤原正彦さんが「才能を育むには美しい風景のなかにいなければいけない」って言ってたけど、きれいな景色って脳に栄養を与えている気分になれるし、変化のある風景っていい刺激にもなる。だから変化があるコース、風景がば~っと変わるコースっていうのが僕のコースどりの条件。景色の変わらないルームランナーは苦手ですね。
お札をランニングパンツに忍ばせて、景色を楽しみながら走って街まで行き、パブでビールを飲んで、帰りはちょっとほろ酔いで帰ってくる。ケンブリッジではそんなランニングがいいですね。
国内にも素晴らしい景色はあります。意外と好きなのは、石川県にある千里浜なぎさドライブウェイ。日本で唯一、世界でもフロリダとニュージーランドにしかないと言われている、砂浜の道路です。視界のいい海岸沿いを、砂の感触を感じながら走れる、とても気持ちのいい場所です。