巨人の外野陣がお粗末なプレーを連発した時に……。

　橋本は3年目の21歳。仙台育英高校時代は、「みちのくのイチロー」と騒がれた、快足・巧打・強肩が持ち味の選手である。特にイチロークラスなのはその肩の強さで、高校3年夏の甲子園では、右中間から体勢を崩しながらもサードベースまでノーバウンド送球し、観衆の度肝を抜いたことがある。昨年のイースタンでは10個の補殺を記録している。

　そもそも、巨人が3戦目にして、橋本の起用に踏み切ったのには伏線があった。2戦目までの戦いで、巨人・外野守備陣が余りにもお粗末なプレーを繰り返していたからだ。1戦目では、左翼手のラミレスが新井のなんでもない左翼フライを落球。2戦目では、中堅手・長野が本塁への送球を焦って暴投。走者のさらなる進塁を許していた。

　2戦目まで1敗1分の戦績は、巨人サイドからすれば守備陣の隙を突かれた走塁によるものばかり。これが、投手を含めたディフェンス全体をばたつかせていた。

　だから、原監督が「今考える最善策の起用」に橋本の名前を挙げたのは、至極、納得のいく選択だった。

「みちのくのイチロー」が大抜擢に応えて“魅せた”攻守のプレー。

　その橋本に、野球の神様は好機を与える。

　3回表、先頭でバッターボックスに立った橋本は投手前に緩いゴロを放つと、快足を飛ばして内野安打で出塁。犠打で二進の後、坂本、藤村の連打で、先制のホームを踏む。

　守備の方でも、見せ場が訪れる。

　6回裏、2死一・二塁で、阪神の6番・マートンが詰まりながらもセンター前へ運ぶと、二走・鳥谷は好スタートを切って、本塁に6.72秒という好タイムで滑り込んだ。ボールに猛然とつっこんだ橋本は、矢のような返球を本塁へ送った。送球がわずかに逸れてギリギリで間に合わなかったが、鳥谷の足と橋本の肩というコンマ数秒を争うハイレベルな戦いは観る者を魅了するものがあった。

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