野球善哉BACK NUMBER
伝統の一戦で見えた両チームの未来。
阪神×巨人戦の若手起用を検証する。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/09/26 12:10
今季は21試合に出場して打率.167の橋本到。原監督の育成にかける信念が垣間見れる重要な時期での大抜擢であった
1勝1敗1分。
9月23日からの3連戦の意味を思い返してみた。
CS進出を争うであろう阪神対巨人の天王山は、両者痛み分けで戦いを終えた。
2位・中日を追いかける意味でも、両者にとっては煮え切らない結果になった。いや、セ・リーグにとっても、残念な展開となったのではないか。できることなら、この3連戦でどちらかが3連勝しておくべきだった。巨人が阪神の息の根を止めて、2位あるいは首位戦線を激化させる。もしくは、阪神が3連勝して、巨人との差を詰める。その上で、広島を絡めた3位争いを展開する。パ・リーグのような白熱した2、3位争いをセ・リーグにも期待していたのだが……残念で仕方ない。
阪神と巨人だけに目を向けると、この3日間の戦いを見る限りでは2位・中日を捉えそうな勢いは感じなかった。CS進出を懸けた争いは混沌としてはいるものの、白熱してはいないというのが現状ではないだろうか。
とはいえ、この3連戦が意味したものには、ただの勝敗を越えたものがあった。両者のチームビジョンに大きな差が見えた3連戦でもあったからだ。
それはスタメンを見れば、明らかである。
違いを挙げると、巨人が若く、阪神は若くない。
また、巨人には生え抜きの選手が多く、阪神には少ない、ということだ。
巨人の若手積極起用と対照的な阪神は、何を狙っているのか?
巨人は'06年高校生ドラフト1位の坂本勇人を始め、'07年高校生ドラフト1位の藤村大介、'08年4位の橋本到ら高卒選手がスタメン入り。先発投手も、西村健太朗、東野峻ら高卒の生え抜き選手が名を連ねた。
一方の阪神はというと、生え抜きは鳥谷敬らがいるが、高卒のスタメンは0。20代は2戦目先発の岩田稔と1、2戦でスタメン出場した柴田講平しかいなかった。その柴田も、2戦目で走者一掃の適時三塁打を放ったというのに、3戦目の巨人の先発が左腕の内海哲也ということで、スタメンから落ちてしまった。そして、代わって入ったのは若手成長株の上本博紀(25歳)や高卒6年目の大和(23歳)ではなく、32歳の浅井良だった。
両者のスタメン起用法にこれだけの差がある中でも、一番のサプライズは3戦目で巨人の8番センターをつとめた橋本の抜擢である。