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“真弓色”なき阪神が迷走状態?
岡田監督だったら……と考える理由。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byTamon Matsuzono
posted2010/03/15 10:30
昨季はクライマックスシリーズ進出も逃している真弓監督。今年のスローガンは「Focus on this play,this moment!!(そのプレイ、その一瞬に集中せよ!)」で、昨季と同じもの
数年先を見据えてチームを改革する岡田監督の卓見。
岡田監督だったら――。
やはり、だから、どうしても、そう思わずにはいられないのだ。
真弓監督も岡田監督も、1年目は4位だった。
岡田監督は『なぜ阪神は勝てないのか?』という江夏豊氏との対談集でこう話している。
「そらもう絶対4位ですよ。チームを変えられるのは。(中略)85年も03年も05年も、阪神の優勝の前年はみんな4位ですよ
つまり2位や3位だと、球団も動いてくれないし、思い切った改革もできないというのだ。
その言葉通り、岡田監督はJFKに代表されるように投手陣を刷新し、2年目にリーグ優勝を果たした。それ以上にすごいのは、その後、3年間も常に優勝争いをしたことだろう。目先のことにとらわれず、数年先を見越して根っこを植え替えた証拠だ。
オリックスの監督となった今年も、補強ポイントが実にわかりやすい。
昨シーズン1勝の小松聖を後ろに回し、昨年のドラフトでも「今の野球は後ろがしっかりしていないと勝てない」と、菊池雄星などの超大物は断念し、即戦力の中継ぎ投手として1位で古川秀一(日本文理大)、2位で比嘉幹貴(日立製作所)を指名。一にも二にも、とにかく救援陣を徹底的に整備した。
さらに、チームリーダーと呼べる人材がいないことから、メジャー帰りの田口壮を補強。確かに今のオリックスなら、田口にも働き場所がありそうだ。
これだけ明確なビジョンを打ち出せば、仮に今季、結果が出なかったとしても来季につながることだろう。
“真弓色”なき阪神は満足できる結果を残せるのか?
岡田監督のチーム改革を観察していると、岡田監督にあって真弓監督にないものがよく見えてくる。要は、色だ。真弓カラーが見えてこないからこそ、どこか不安をかきたてられるのだ。「ノーリスク・ノーリターン」の原則にならうなら、成果に見合うだけのリスクを払っていないようにも映る。
もし、この布陣で結果が出なかったら、阪神は来年は2年ぶんの大鉈を振るわなければいけないことになるだろう。
今季、ただでさえおもしろい阪神とオリックスの因縁の交流戦は、両指揮官の監督としての資質を見比べる意味でも興味が尽きない。