MLB Column from USABACK NUMBER
ウッズとA・ロッドを結ぶ「点と線」。
薬剤スキャンダルの新展開。
text by
李啓充Kaechoong Lee
photograph byGetty Images
posted2010/03/06 00:00
ウッズとA・ロッドを結ぶ「点と線」。薬剤スキャンダルの新展開。
米国スポーツ界を、新たな薬剤スキャンダルの大波が襲おうとしている。
きっかけは昨年9月。カナダから米国に入国しようとした女性の車から、ヒト成長ホルモン(以下、HGH)等の「違法」薬剤が発見されたことにあった。
「薬剤『密輸』を試みたのは、雇い主であるカナダ人医師、アントニー・ガレアに命じられたから。HGHはクライアントの米国人スポーツ選手用だった」とする女性の供述に基づき、10月、カナダ当局はガレア医師を逮捕した。
元々ガレアは、創傷部に「自己PRP(多血小板血漿)」を注入する治療などで名を売ってきた医師。彼の逮捕が大きく報じられたのは、タイガー・ウッズや、ママさん水泳選手として有名なダラ・トーレスに加えて、メッツ遊撃手のホセ・レイエスなど、有名スポーツ選手を多数患者(クライアント)として抱えていたためだった。
ウッズは不倫の謝罪会見で薬剤使用疑惑も釈明するはめに。
ウッズがガレアの「患者」となったのは、一昨年に受けた膝の手術からの回復が思わしくなかったためといわれている。ガレアはウッズを治療するために、ウッズの自宅があるフロリダまで何度も赴いたとされているが、米国医師免許を持たないガレアがフロリダでウッズの診療を行ったとすれば、それだけで「医師法違反」となる。
2月19日、不倫騒動についての謝罪声明を発表した際、ウッズは不倫とは何の関係もないにもかかわらず、わざわざ「私は機能増強薬剤を使ったことはない」と言及したが、ガレア医師逮捕の結果生じた薬剤使用疑惑について釈明する必要があったからに他ならない。
ガレア医師の患者である MLB関係者はA・ロッドを含む3人。
いまのところ、ガレアとの関連で名が上がっているMLB関係者は、アレックス・ロドリゲス(ヤンキース)、ホセ・レイエス(メッツ)、カルロス・デルガド(FA、昨年メッツ)の三人。
このうちレイエスは、先週FBI捜査官の事情聴取を受けたことをすでに認めている。
またA・ロッドは、昨年の股関節手術後、ガレアの同僚であるカイロプラクター、マーク・リンゼイの指導の下でリハビリテーションを行ったことが判明している。
リンゼイの名がドーピング事件に登場するのは今回が初めてではなく、数年前に米スポーツ界を揺るがしたバルコ社事件にも深く関与したことが知られている。