佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER
サードカー
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)
posted2006/06/14 00:00
コース脇のグリーンを突っ切り、グラベルに入って土ぼこりを上げ、右サイドからバリアにヒット!右前輪は飛散防止のためのロックワイヤーでかろうじて繋がっているとはいえ、車体からは離れてしまっている。
土曜日午前中の試走が始まって23分、佐藤琢磨は4速・200km/hで旋回する通称“ベケッツ”で、今季初めてのクラッシュを味わった。
「突然マシンのリヤがコントロールを失って、コースに戻れなかった。マシンの動きも不安定だったし、路面コンディションも悪く、風も強かった。静かなコンディションでも安定しないマシンですから、突風などの外乱を受けたら一瞬にしてコントロールを失います」と、琢磨。
その2分後、今度はセカンド・ドライバーのF・モンタニーがブリッジコーナーでコースオフ。マシンにダメージはなかったものの、マシンはグラベルに入って出られず、土ぼこりまみれ。
「こんなこともあるんだなぁ、と思ったよ」と、鈴木亜久里オーナーは苦笑する。
セッションが終わって2台のマシンがピットに戻った。予選開始まであと2時間。
「修理には時間がかかるダメージだったので、スペアカーを使おうということになりました。エンジンが替わるので(10番降格の)ペナルティを受けますが、それは仕方なかった」
亜久里代表も「琢磨のマシンだけ修理すればいいならエンジンは変えずに車体だけ換えることもできたけど、モンタニーのクルマも見なきゃいけなかったのでスペアカーにした」と言う。このスペアカーは、金曜日に山本左近が走らせたサードカー(1号車)だ。
「予選の1分前にクルマができて、なんとか間に合いました(笑)」という琢磨はブッツケ本番のマシンながら「自分のレースカーとはずいぶん感じが違いましたが、100に近い力は出せたと思います」と言い、モンタニーより0.2秒速いタイムを記録。トゥルーリが予選後にエンジン交換となったためにスタートは21番手からとなった。
決勝レースはマシンのポテンシャルの差が完全に出てしまい、終始最後方で周回。3周遅れの17位に終った。
「前戦のモナコではレース内容がよかったのにトラブルで完走できませんでしたが、ミッドランドを食えそうだった。でもこのシルバーストンのようなハイスピード・サーキットに来たらボクらはひとたまりもありませんでしたね」と、レース後の琢磨。亜久里代表も「2台完走と言ったってレースしてないんだから嬉しいわけない」と言い、新車SA06を用意できない自分が悔しいと、苛立ちも見せた。
このシルバーストンでいったんヨーロッパ・ラウンドは終了。次はカナダ〜アメリカの北米2連戦となる。
「北米のレースはそれほどダウンフォース・レベルが高くないですから、違う環境でレースできます。マキシマム・ダウンフォース不足はこのシルバーストンを最後にしたいですね」と琢磨は笑う。
新車SA06が出るまで、あと“2”レースを消化すればいい。