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スペインを支える“100年の育成術”。
サッカーU-17W杯3位の実力とは?
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byFIFA via Getty Images
posted2009/11/21 08:00
試合序盤から速いテンポのサッカーで攻めたナイジェリアは、前半30分にGKとの1対1の局面を作り先取点。後半になってようやくボールを支配し始めたスペインだったが、最後まで身体能力の差が埋まらないままの敗戦となった
ユース指導歴30年以上のヒネス監督はA代表の“先生”。
各世代の代表に選出されてきたシャビの言葉の中に登場したヒネス監督とは、現U-17代表監督だ。
スペイン代表のユース世代で30年以上、指導を行ってきたヒネスはシャビ以外にも現A代表のほとんど全ての選手達を指導してきた。まさに育成のエキスパートであるヒネスは今大会を迎える前にこう語っていた。
「今回のチームにはセスクやシルバ、ボージャンのような選手はいない。グループとしての戦い方を徹底しなければ、上には勝ち進めないだろう」
自らの名前を挙げられたセスクはヒネスのことを“先生”と呼んだ。
「普段は一緒にプレーしていない選手達がチームとしてプレーするためのグループ作りを知り尽くしている。代表メンバーとして集まるたびにグループとしての戦い方を教え込まれたし、それは僕らが選手として成長するのを大いに助けてくれた。僕らの時は準優勝だったけど、とても貴重な経験になった」
3位決定戦では戦術を即座に修正。驚くべき適応力。
ナイジェリアとの体力差を埋めるまでには至らなかったものの、U-17スペイン代表は3位決定戦ではコロンビアを1対0と完封して3位の座を勝ち取った。
ナイジェリア戦から3日後に行われたこの試合では、スペインはシャビが語ったようなバランスを重視する試合運びを行い、自分達のペースでプレーを展開した。コロンビア選手達の身体能力はナイジェリア選手達のように驚異的ではなかったものの、すぐさまチームとしての戦い方を修正したことはこの年代のチームとしては驚くべきことではないだろうか。
そこにはもちろんヒネス監督の優れた手腕があることは確かだが、スペインの選手達が普段からいかにグループとしてプレーすることを徹底してきているかが垣間見える。現U-17代表チームの選手達が成長し、次の年代の代表となった時に例えばナイジェリアと対戦したら、彼らは同じ過ちを繰り返さないはずだ。