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新ストリート・サーキットへの反応。 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2008/08/29 00:00

新ストリート・サーキットへの反応。<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

 北京オリンピック閉会式の8月25日にスペインで行なわれたF1第12戦ヨーロッパ・グランプリは、スペインのオレンジで有名なバレンシア市街地に仮設されたストリート・サーキットで戦われた。

 近年、最新設備を有するF1コースがマレーシア、バーレーン、中国、トルコなど新興開催国で次々に建設されているが、これらは純クローズド・コースで、いわゆる“パーマネント・サーキット”と称されるもの。バレンシアには冬のF1テストでひんぱんに使われたり、MotoGPなどが開かれたりするパーマネント・サーキットがすでにあるが、F1レース開催には不適格な規模で、今回のグランプリは既存のものとはまったく別なところに設けられたストリート・コースで開催されたのだった。

 新ストリート・サーキットがマリーナに接しているとは聞いていたが、実際に行って見て分ったのは、海岸沿いとはいえモナコとはまったく異なったロケーションであることだった。モナコが完全なリゾートであるのに対して、バレンシアは歴史ある貨物積み出し港で、倉庫群が屋根を並べ、そこがF1のガレージになり、またVIP観戦のパドッククラブに転用されたりしている。そうしてまた同地域は再開発の真っ只中。サーキット周辺は建設ラッシュで、7年契約といわれるグランプリのストリート・サーキットは、その象徴的存在として祭り上げられているのである。

 F1パドックともなったバレンシア港でもうひとつ驚いたのは、F1ガレージと海との間にあるいくつもの巨大な真四角な倉庫。およそ6階建てくらいのものが並んでいるのだが、これは国際的ヨットレースとして著名なアメリカズカップの艇納庫であった。その建造物の異様に大きいこと。これにはF1のファシリティもかすんでしまうほど。

 サーキットは1周5.419kmで、1周3km台のモナコよりはるかに長い。歩いてみるとコース幅が広く、直線部分は4車線道路分の幅があった。コース図には25のコーナーがあるが、コース図がコーナーになっていても実際には幅員の広さによって直線的ラインを採ることができ、長い直線をタイトコーナーが結ぶ典型的なストップ&ゴー・サーキット。多くの関係者の話を聞くと、レイアウトはカナダのモントリオールに似ているという声が占めた。モントリオールもまたストリート・コースである。以下に関係者の声を拾ってみた。

 「トラックはいいね。長いストレートからのブレーキングはすごくやりがいがある。ボクもプラクティスでミスをしたよ。最終セクターはドライブしがいのあるところで、最高の集中力が求められる」(F・アロンソ)

 「事前にシミュレーションはして来たけど、実際にコースを覚えるのに数周かかった。このコースはブレーキングが難しい。最終セクターに高速コーナーがあるが、4本の長いストレートがあるストップ&ゴー・サーキットだ。ボクが好きなタイプ」(R・クビサ)

 「いくつかのコーナーはモナコに似ているけど、いくつかはまったく違っている。何本かの長いストレートがあって、これなんかはバーレーンに似ているね」(F・マッサ)

 「コースを実際に歩いてみたが、実に印象的だった。他のストリート・サーキットにはない充分な退避ゾーンがある。これは真のストリート・コースではない」(BMWスポーツ・ディレクター:M・タイセン)

 マッサ、そしてタイセンの言葉がこのコースの特徴をよく表わしていて、バレンシアは街中に一般公道を利用して造られたパーマネント・サーキットの感があるのだ。モナコではひんぱんに見かけるコース脇のガードレールがなく、左右はコンクリートの壁が続く。ポールシッター、マッサの速さは1ラップ200km/h弱。モナコの160km/h弱とはえらい違いである。

 そんなふうに好感の持てる新バレンシア・サーキットではあったが、唯一不満だったのは決勝レースでオーバーテイクがほとんど見られなかったこと。終盤、バリチェロを見事にオーバーテイクした中嶋一貴はレース前「ストレート手前のコーナーで相手がミスを出した時がチャンス」といい、事実、彼はバリチェロのミスに付け込んだのだが、これをほぼ唯一の例外とすれば、F1ドライバーがいかにミスを出さない存在であるかということの証明だろう。前座のGP2では大いにオーバーテイク・シーンが見られたものだが……。

 本番のグランプリの順位変更はピットストップでしか見られず、勝ったのはポールシッターのマッサ。2位ハミルトン、3位クビサと、ここまでは予選順位通りで、どちらかといえば退屈なレースだった。

 今シーズンはこの後もうひとつ、新生ストリート・サーキットでグランプリが見られる。9月28日のシンガポール・グランプリである。しかもシンガポールはF1史上初のナイター。オーバーテイクがあるのかどうか、いまから楽しみなグランプリである。

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