チャンピオンズリーグの真髄BACK NUMBER
高まる“撃ち合い”への期待。
――歴代CL決勝評価ランキング付き。
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byGetty Images
posted2009/05/17 06:00
世界で2番目に人気があるチーム(バルセロナ)と、3番目に人気があるチーム(マンチェスター・ユナイテッド)の間で争われる決勝戦は、興行主のUEFAにとって、ファンにとって、メディアにとって、考えられる限りにおいて最高のカードだと言える。
各ブックメーカーも当初からこの2チームを本命、対抗に推していた。人気面に加え、実力面でも拮抗すると予想されていた2チームが、順当に決勝で顔を合わせるケースは、思いのほか珍しい。’93-’94シーズンのミラン対バルサにまで遡らなければならない。
もっとも、この15年前の決勝も、戦前の予想ではバルサ有利が7、8割を占めていた。結果は4-0でミランの勝利に終わったわけだが、今回は戦前予想で拮抗している。3大ブックメーカーのひとつであるウィリアムヒルは、5月13日現在、8/5対8/5という両者イーブンの予想を立てている。前代未聞というと言いすぎだが、僕の15年の決勝観戦歴のなかではもちろん初。珍しすぎる話になる。
バルサもマンUも決勝では必ず「撃ち合い」ます。
期待が募る理由はそれだけではない。
バルサ、マンUとも撃ち合いを辞さないチームだからだ。
決勝戦は90分一本勝負。試合時間は、180分(90分×2試合)で行なわれる通常のトーナメントの半分だ。しかも決勝戦ということで、慎重な姿勢もその分だけ増す。「決勝戦ほどつまらない」といわれる所以だが、両チームに限っては、そうしたジンクスを差し引いても、撃ち合いが期待できる。リードしたからといって変に守りを固めようとしない。世界で2番目、3番目に人気があると言われる理由もそこにある。この2チームほど潜在的にエンタメ性を内包しているチームはない。
ただ、僕の観戦経験で言えば、期待すればするほど「ハズレ」に出会う確率は高い。そういう場合は計り知れない落胆に襲われるので、今回も極力、平常心で観戦に臨むつもりだが、少なくとも読者の方々には「面白くなりそうですよ!」と、声を大にして煽りたくなる。
審判の判定やケガ人など、どちらかが特別のハプニングに見舞われない限り、凡戦にはならないだろう。今回ばかりはお約束します。
CL決勝戦のエンタメ度をサッカー番長が評価すると?
「決勝戦ほどつまらない」というジンクスについても、ひとこと言いたくなる。確かに、チャンピオンズリーグファイナルで大当たりの試合に遭遇することはまれだ。しかし、僕の決勝観戦歴のなかで、本当につまらなかったのは、’02-’03シーズンのユベントス対ミラン(0-0延長PK 、ミランの勝ち)ぐらい。たいていの場合、時間はアッという間に経過する。
’93-’94シーズン以降の決勝戦のエンタメ性を、10段階で独自に分析すれば、以下のようになる。
’93-’94 ミラン対バルサ(5)
’94-’95 アヤックス対ミラン(7)
’95-’96 ユベントス対アヤックス(6)
’96-’97 ドルトムント対ユベントス(7)
’97-’98 レアル・マドリー対ユベントス(8)
’98-’99 マンU対バイエルン(7)
’99-’00 レアル・マドリー対バレンシア(5)
’00-’01 バイエルン対バレンシア(5)
’01-’02 レアル・マドリー対レバークーゼン(9)
’02-’03 ユベントス対ミラン(3)
’03-’04 モナコ対ポルト(6)
’04-’05 ミラン対リバプール(9)
’05-’06 バルセロナ対アーセナル(7)
’06-’07 ミラン対リバプール(7)
’07-’08 マンU対チェルシー(7)
マンUの安定感は素晴らしく、バルサのできはアンリ次第。
今回の決勝でカギを握るのはアンリだ。彼が出場できるか否か。ベストコンディションで登場すれば、互角ないしはバルサが僅かに有利と予想する。そうでない場合はマンU有利。僕はそう見ている。
準決勝のチェルシー戦。バルサは最悪の試合をしたと思っている。パスを繋げどゴールは遠し。ユーロ2008で優勝したスペイン代表が準々決勝まで陥っていた症状を髣髴させたし、また身近なところでは、レベルには大きな差があるものの、我が岡田ジャパンのサッカーともイメージが重なった。左のウイングのポジションにアンリが入り、ピッチの左右がワイドに保たれるか否か。ピッチを効率よく広く使うことができるか。マンUにはその心配はないが、バルサには一抹の不安がある。
お互いがピッチを広く使い合えば、数多くのゴールが期待できる文字通りの撃ち合いになる。僕はそう読んでいる。