佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER
ノーコメント
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)
posted2007/10/23 00:00
「驚きました。最初のアタックでは14位だったかな、いいところにいたんだけれども、2回目のアタックではグリップ感がなくて滑ってしまったんです。100分の何秒差でQ2に行けずに凄く口惜しかった」
今シーズン最後の予選を佐藤琢磨は18位で終えた。100分の数秒台で争われる予選はどのポジションに居ようとそれなりにシビアで、1周を完璧に回らないと望んだタイムは出ない。たとえばアタックに入る前のアウトラップはタイヤをウォームアップするために重要で、琢磨の2アタック目のアウトラップでは渋滞にひっかかってしまい、それが“グリップ感のなさ”につながったようだ。
また、午前と午後では路面状況が変わってしまい、それを琢磨は「午後は温度が上昇したことで、新しい舗装のオイルが出て来たのではないか」と分析する。同じようなことはこのレースがデビューになる中嶋一貴も訴えていて「普通は走り込むと路面はよくなるのに、今日は逆に悪くなった」と語る。ブリヂストンの浜島裕英MC・MSタイヤ開発本部長によれば「路面温度が上がってタイヤの滑りが大きくなったことと、地表面の空気が上昇して空力に影響してダウンフォースが減少したからではないか」ということだ。
最終戦に来てスーパーアグリのマシンにもたらされたものは、スパ-フランコルシャンから使いたかったリヤ・ウイング。しかしそれも、驚くほどのポテンシャルアップを運んでは来なかった。
「今年1年頑張って来たチームのためにもQ2に上がりたかったけど、それはできなかった。でも、ベストは尽くした」と、琢磨は予選を総括した。
いかにもブラジルの10月らしい気温36度・路面温度53度の酷暑の下で始まった佐藤琢磨、今季最後のレースは、スタートダッシュの出遅れから幕を開けた。
「イン側のグリッドは汚れていてグリップがよくないんですよ。スタートでは(中嶋)一貴にも抜かれてポジションを落としました」という琢磨だが、その後が“キレ”た。
「1コーナーから9コーナーまで、ずっとサイド・バイ・サイドとオーバーテイク(笑)。一貴を抜き返して、バトンをアウトから被せ、フィジケラも抜いた」琢磨は14位でピット前に戻って来た。さらに12位、11位とポジションを上げたが、健闘もそこまで。
「最初の数周はポジティブでしたけど、その後ペースが上がらず……」いったんは抜いたバトン、中嶋一貴にも抜き返され、2周遅れの12位で今季を終えた。
「もの足りない感じもしますが、完全燃焼できたレース。今年はポイント獲得などたくさんの目標が達成できたし、チームも頑張った。彼らと一緒にやってこれたことを誇りに思う」と、レース後の琢磨。後半は苦しいレースが続いたが、ハンガリーからは7戦連続完走。17戦14完走・4得点は胸を張れる数字だろう。
来年のチーム選びについては「ノーコメント」だが、このオフの間に「じっくり真剣に将来のことを考えたい」と言い残し、家族の待つモナコへ帰って行った。