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アドリアーノに変身のススメ。 

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酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2007/03/23 00:00

アドリアーノに変身のススメ。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 インテルのアドリアーノが、またもイタリアメディアの餌食となった。後半から途中出場するなり2アシストと見せ場を作った3月19日のアスコリ戦から24時間後。プロバスケット選手、ハウエルとの乱闘騒ぎが発覚したからだ。

 目撃者の証言によると、アドリアーノは20日未明、ミラノ市内にあるディスコで同伴の女性2人がハウエルに侮辱されたことから口論に発展し、ハウエルを殴ってしまった。イタリア各紙は「夜のミラノで巨人対決」「身長189センチのインテルのストライカーが206センチのハウエルを殴る」とアドリアーノの失態を面白おかしく伝えた。「事件」は大々的に報じられ、アドリアーノ本人以上に冷静でいられなかったのはインテルだった。

 先月も、ディスコ内でのアドリアーノの醜態がゴシップ誌に書かれたこともあり、ピッチ外での彼の振る舞いに限界を超えたクラブ幹部は、ついにアドリアーノの放出を決意したのだ。

 「問題児」はどこへ行くのか?現在はフィオレンティーナ行きが有力視されている。かつてパルマで指揮を執り、アドリアーノをスターに育てたプランデッリが監督をしているからだ。メディアによれば、イタリア代表のFWトニとの交換トレードも噂されている。

 最近、いわゆる「問題児」と言われるタレントが上手く活かされていない。レアル・マドリーのFWカッサーノも、結果的には父親的存在のカペッロ監督にもさじを投げられ、ミランのFWボリエッロもアンチェロッティの元で教育されるはずが、ドーピングの疑いで現在は出場停止。「問題児」の再生を託されたクラブ、または監督は、任務をまっとう出来ずに苦しんでいる。

 ただひとり、悪童のレッテルを払拭し、セリエAの聖(サント)になった男がいる。ローマのトッティである。トッティも、EURO2004での唾はき事件があった。あれから3年、現在はセリエAの模範的選手となっている背景に、マネージメント、つまり周囲の関係者による適切なアドバイスがあった。カリスマ性とスノッブさを捨て、本来持っていた天然ボケを表に出し、「三枚目」に変貌。いまなおトッティが好調の秘訣は「天然ボケ」にあるのだ。

 エースという重圧から逃れるために、「将軍」の一面を捨て、「凡人」に徹する。アドリアーノも三枚目のキャラクターを隠さないようなイメージチェンジこそが、イタリアで平穏に暮らしてゆく手段なのではないだろうか?イタリア人はアドリアーノの変貌に期待している。

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