日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
岡田ジャパン内閣改造計画。
流れを変える新コーチは誰か?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAkihiro Sugimoto/AFLO SPORT
posted2010/02/20 08:00
浦和レッズをビッグクラブに育て上げた功績で有名な犬飼基昭日本サッカー協会会長。岡田武史監督の全面支援を発表したが、その決断は果たして正しかったのか?
鹿島のオリヴェイラ監督のようなフィジカルコーチが欲しい!
しかし、韓国戦で見た現実はどうだったか。同じアジアのライバル相手にことごとく球際で負けてしまっていた。これがカメルーン、オランダ、デンマーク相手だと言わずもがな、である。体幹トレーニングの効果は出ているだろうし、オフ明けのコンディションの問題もあるだろう。それでも本大会までの4カ月で、世界と張り合うレベルにまで到達できるとは思えないのである。韓国戦を見たうえでの正直な印象だ。
以前のコラムでも書いたが、鹿島アントラーズを3連覇に導いたフィジカルコーチ出身のオズワルド・オリヴェイラはコンディション調整の重要さを教えてくれている。残り15分の試合を再開するにあたって、ウオーミングアップでわざわざ紅白戦をさせ、気持ちが途切れないように選手をロッカーに戻さないで試合に臨ませた昨年10月の川崎フロンターレ戦の手腕は、まさに“マジック”であった。
岡田ジャパンが圧倒的な運動量を前提とするサッカーを志向するのであれば、オリヴェイラのような知識を持つフィジカルコーチが必要なことは明白だ。南アフリカには高地という問題もある。短期的にコンディションを整えられる専門家がスタッフに加わることは、チームにとって間違いなくプラスになる。
“兄貴分”的なコーチとして山本昌邦氏のような人材が必要。
入閣候補として挙げたいのはフィジカルコーチだけではない。今の岡田ジャパンには“兄貴分”的なコーチがいない。練習の雰囲気は悪くないし、チーム内部から今の体制に不満の声が出ているわけではない。ただ、今回の4連戦では、一度悪くなった流れを変えられなかったという事実がある。コンセプトに縛られ過ぎて、戦い方に創意工夫が欠けていることは選手も実感していた。ここで、監督の考えと選手の考えをすり合わせることは不可能だったのか。こういうときこそ監督と選手のパイプ役になるコーチの出番ではなかったか。
トゥルシエジャパンのときはエキセントリックな指揮官をフォローするように、山本昌邦コーチが精力的に選手たちに声をかけていたことを思い出す。その山本は2月15日付スポーツ報知の紙面でこう書いている。
「退場した闘莉王が引き揚げる際に、誰かがそばに駆け寄って守るという気遣いもチームがファミリー(家族)というなら必要だ」
これもコーチ経験があるゆえの視点だろう。選手側に立って細部の変化を逃さずに気づくことも、コーチの大事な役目だと思う。W杯のような短期決戦においては、一体感が何よりも大事になってくる。
協会としては、指揮官を働きやすい環境に置く一方で、外部から冷静に判断することも必要である。戦術面で味付けが必要と判断すれば、ヘッドコーチ格であってもいい。岡田政権でW杯を勝ち抜こうと協会が腹をくくったなら、問題点をくまなく探して、手を打つ責任がある。足りない要素が出てくれば、ひとつの手段としてコーチングスタッフで補強することを真剣に検討すべきではないだろうか。