Column from EuropeBACK NUMBER
ペトロビッチと小野伸二の絆。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byDaiju Kitamura/AFLO SPORT
posted2004/05/07 00:00
来季からフェイエノールトは新体制になる。監督には元オランダ代表のグーリット、そしてアシスタントコーチには浦和レッズでもプレーしたことがあるペトロビッチが就任することになった。ペトロビッチは現在RKCヴァールバイクでプレーしているが、小野伸二とはときどき食事をする仲。レッズ時代の先輩のコーチ就任を小野伸二も「楽しみにしている」と語っている。
SVというビッグクラブでの経験もあり、ユーゴスラビア代表でもあるペトロビッチと小野には特別な絆がある。ペトロビッチがレッズに在籍していた1997年、小野がチームに入団してきた。ペトロビッチは小野の18歳とは思えないテクニックに驚いたが、まだ遊びの延長でプレーしていることが気になった。ペトロビッチは、思い切ってこのルーキーを呼び出すことにした。
「あと2、3年もすれば、おまえはヨーロッパで大きな投資の対象になっているだろう。だが、そこで成功するためには、もっと実効的なプレーもできるようにならなければダメだ」
3年後、ペトロビッチの予想どおり小野はオランダへ移籍する。彼の助言は少なからず、小野のプレーに影響を与えたに違いない。
元々テクニカルマネージャー志望だったペトロビッチが、監督を目指すことになったのは、RKCのマーティン・ヨル監督からアドバイスを受けたからだった。「お前は別の道を考えた方がいい。監督になれ」。ヨル監督はペトロビッチに、監督に必要とされる“リーダーシップ”が備わっていることを見抜いていた。若き小野にアドバイスしたように、多くの選手をいい方向に導く才能がある。今季ペトロビッチはRKC2軍の監督になり、指導者としての経歴をスタートさせた。そして、あるパーティーでグーリットと意気投合し、来季からフェイエノールトのコーチに就任することになったのである。
「目標はオランダ代表の監督になること」というペトロビッチだが、こう語っていたこともある。
「将来、また日本に戻って、浦和レッズの監督をやってみたい」
ペトロビッチは言う。
「オランダの戦術は世界一。システムは関係ない。大事なのはクライフが言うように“5ライン”でプレーすることなんだ」
ユーゴスラビアで生まれ育ち、オランダで監督業を学んだペトロビッチは、いつかその経験と知恵を日本にもたらしてくれるに違いない。