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ドゥンガ 「緻密さと総合力の融合こそ強さの秘密」 

text by

大野美夏

大野美夏Mika Ono

PROFILE

posted2005/12/22 00:00

 ブラジルが、次から次へと才能のあるタレントを輩出できているのは何故か。

 それは、僕たちブラジル人がクリエイターだからなんだ。今の時代はだいぶ変わったけど、サッカーをやるのにシューズも、ボールも、ピッチも、ゴールも何もない時代が長かった。僕が子供の頃は、よく裸足でボールを蹴っていたものさ。ボールも、きれいなまん丸のボールじゃなかった。靴下にぼろきれを詰め込んで作ったボールだってあった。きれいなピッチなんてない。石ころや穴だらけの地面でボールを蹴れば、ボールは好き勝手な方向に飛んでいく。自分が予想もしていない方向に行ってしまうこともしばしばだ。道でやる時もある。道でできないときは、家の中でやる。家の中には壊すと怒られる物があるから、壊さないようにしなければならない。満足な環境がそろっていないから、自分で創意工夫しながらなんとかやっていくしかないんだ。

 当然、ボールはどこに飛んで行くかわからないから、どこに行ってもいいように頭も体も準備をする。物を壊さないようにボールと体をコントロールする。それらを繰り返すうちに反応は一瞬になっていく。次に起こるべきことを想定して、体が動く。ボールがまったく想定外の所に飛んでいく場合に備えて、一瞬で行動に移せるように無意識の準備をする。そんなボール遊びを通して、自然と感覚が研ぎ澄まされていくんだ。

 そうした創意工夫は練習にも表れる。ブラジル人は、与えられた練習以外に自分のイマジネーションや考えを実践してみようとする自発性が強い。自ら考えて技を開発してみたり、できなかったことに挑戦したりと。

 日本人とブラジル人が一番違うと思ったのは、そこだ。自分から進んでやる姿勢、イニシアティブだ。例えば、練習の時、監督が到着するまでただ待っているだけじゃなくてボールを蹴ったり、自分で考えて何か練習を始める。でも、日本だけじゃなく、欧州でも監督の指示が下るまで待つ選手が多いんだよ。

 といって、ブラジルは単に個人の才能に依拠して、自由奔放にサッカーをしているだけじゃない。じつは正反対で、ブラジルでは監督は練習の時、ボールの位置、選手のポジショニングを細かく指導してミスを“修正”する。最初は、頭と意識と体がかみ合わないことが、繰り返し練習することで調和がとれ、自然に無意識にできるようになっていく。五感を働かせてボールに反応できるようにするんだ。

 だから、練習は量よりも質が大切。例えばクラブチームの場合、いつも一律2時間の練習というのもおかしな話で、シーズン当初は新しいグループでチームを作らなければならず、修正点が多いんだから、時間がかかるのは当たり前。でも、だんだん石から宝石に生まれ変わるように、少しずつ修正という磨きをかけ、最後にはぴかぴかに仕上げる。そのときは、もう2時間という時間は必要ないかもしれないね。シーズン中盤は疲れも溜まるから、練習時間は調整すべきだ。

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