サハラマラソン挑戦記BACK NUMBER
360度何も無い砂漠で迷子です……。
過酷なコースでリタイアを夢見る。
text by
松山貴史Takashi Matsuyama
photograph byTakashi Matsuyama
posted2011/04/29 08:00
ひどい砂塵を防ぐためにマスクを着用
360度何も目印が見えないところで迷子になる。
さらにCP2を過ぎて、次はどんなコースなのだろうと怯えながら歩いていると、再び砂丘が現れる。
「サハラマラソンだから仕方ない」と腹をくくり、一歩一歩進む。この時点で周囲にはほとんど人がいない。恐らく順位は700番台だろうか。
周りを見ていると後ろの方を歩いている大体の人がトレッキングポール(杖)を持っている。実際、最初から歩いて250km完走しようという人が、少なからずいるらしい。完歩になるのか? そういう人は、それ用に荷物を用意していて、例えばトレッキングポールを持っていたりするわけだ。モンベル渋谷店の店長・市橋さんにも持っていくよう何度も勧められたが、自分の中ではトレッキングポールを使ったら負けだと勝手に思っていたので、断ってしまった。そのときは「完走すること」だけじゃなく「世界相手に戦うこと」も目的の一つだったのだ。少し格好いいことを言ってしまったが、杖に関しては非常に後悔。まさかこんなに早く足を痛めるとは思っていなかった。
今度出るときは忘れずに杖を用意しよう。100%無いと思うが。
後悔しても始まらないので、ただただ進む。今回の砂丘はさほど長くなく、すぐに出ることができた(といっても2時間近くはかかっている)。
しかし、ここでまたもやトラブル発生。迷子になる。
これまでは、人か、大会側が用意した赤目印を頼りに歩いてきたが、360度何も見えなくなった。仕方ないので、山を登り、辺りを見渡すも何も見えない。見えるのはラクダのみ。
最早ここまでか。リタイアが頭を過る。
2日目で、しかも迷子でリタイアは格好悪すぎる。幸いにも寝袋や食料はあったので、1週間くらい潜伏してからリタイアしようかとも考える。1週間後ガリガリになって出てくれば大丈夫だろう。みんなきっと同情してくれるはずだ。そんなことを考えながら、15分ほどダラダラしていると、巡回中の本部トラックが見えた。方角が分かったので、そちらへひたすらに進むと、CP3を発見! 嬉しいような、悲しいような、よくわからない気分のまま、30分後、CP3に到着。
かなり後ろのグループだったので、休憩を取らずスタート。スタッフに「後たった7kmだよ! 頑張って!」と言われる。「たった7km」か……色々な感覚が狂いそうだ。
たった7kmのコースはゴツゴツした道ばかり。
「スター・ウォーズのロケ地じゃないか?」と外人選手が話している声が聞こえた。事実、モロッコは映画のロケ地に良く使われている。この忌々しい10kgの重りと、砂塵さえなければ、楽しく観光できたのだが……そんなこんなで、たった7kmを2時間かけてゴール。SULTANティーを飲んでタイムを確認すると、8:16:45。時速は4.59km。そんなに悪くないが、膝の状況から見て、明日はこれ以上無理だろう……。
2日目のゴールに着くと、もうPM5時だった。PM6時には日が沈むので、急いでストレッチやら夕飯の準備をしないといけない。恐ろしくお腹が空いていたので、またしても、ご飯とラーメンを食べる。少しでもいいので、荷物を減らしたいという思いがあるからだ。同じテントの小林さんのサングラスが砂塵でやられたといっていたので、予備のサングラスを貸すことにした。親切に見えて……これも荷物を減らすため。100g軽くなるだけでも大分違う。そんなシビアな世界なのだ。
この日もPM7時半には眠る。雨も少し降っており、散々な日だった。
●4月5日(火)レース3日目……3rd stage Total 38km、CP1:12.5km、CP2:24.5km、CP3:31km
AM5時45分「アレアレアレアレ!」という雄叫びに起こされる。またベルベル人だ。15分もフライングだが文句を言っても相手にされない。たまに使う「こんにちは」「ありがとね」という日本語が妙に癇に障る。どこで覚えたんだ?
朝、メールの配達があった。友人やtwitterのフォロワーの方から応援メールが来ていた。こんなに嬉しいものだとは思わなかった。こんなことなら、もっとアナウンスしておけばよかった。
準備作業にも慣れ、水を補給し、スタート地点へ向かう。噂によれば、1~2日目で結構な数のリタイアが出たらしい。やはり、あの砂塵は厳しかったようだ。今日は天候も悪くなく、気分よく歩けそうだ。
今日もパトリック氏はおしゃべりだ。いつものごとく誕生日の人を紹介して音楽をかけてテンションを上げ、スタート!