「自分の経験を押し付けない、経験論で語らない、ということですね。ときに必要な場面で『自分はこうやっていた』という比較対象にしたり、『こっちがいいんじゃないか』というときに使ったりすることはありますけど、ほぼ経験論を語ることはありません。

　何より今預かっている選手が、私より経験値が上なので。ヨーロッパでプレーすると生活を含めて大きな経験値になる。彼らから学びながら、でも同時に『チームとしてはこうしてほしい』と伝えるのが私の役目です」

　サッカーにおいて、正解は時々刻々と変わるものだ。前半の正解が、後半に不正解になりうる。自由自在に変わる柔軟さを大事にしているからこそ、自分の成功経験を押し付けてはいけないと考えているのだろう。

　過去に縛られず、変化し続ける。それでいて本当に大切なものは変えない。一見矛盾するこの思考を両立するために、森保は過去の経験に頼らず、新たな吸収を怠らないのだろう。

＜続く＞